新型コロナウイルスの患者を受け入れる沖縄県立中部病院(玉城和光院長)で起きたクラスター(感染者集団)公表に関する会見を巡り、意見が分かれていた同病院と県病院事業局。2日に急きょ双方が同席して開かれた会見で、我那覇仁病院事業局長は「コミュニケーションの齟齬(そご)」を繰り返し、「責任のなすりつけ合いはしない」(我那覇局長)ことで幕引きを強調した。しかし、病院側が会見の機会を逸する要因となったクラスターの「公表の基準」を、県議会で追及されるまで作成しなかった責任の所在は曖昧なままだ。
病院事業局の中矢代真美医療企画監によると、県と病院側は6月11日に会見を開く方向で調整を進めてきたという。しかし「専門家」に「公表基準がない」と指摘されたため、10日にその内容ともに、病院側に「注意が必要」とメールで伝えたところ、病院側はそれを中止の指示と受け取ったという。県は11日以降、県議会で追及されるまで、会見に関する協議を行っていなかった。
2日の会見では、県のメールのみで会見を止めた中部病院の責任も問われたが、玉城院長は「難しい。文面のとらえ方だと思う」と言葉に詰まった。
中矢代企画監は1日に報道陣に対して県の立場を説明した際、「公表の基準」を指摘した「専門家」の氏名を公表しなかった。しかし2日、専門家は県の新型コロナ専門家会議の委員で同病院医師の高山義浩氏だったと説明。理由について「事前に了承を得ておらず、私個人で判断できなかった」と釈明した。
我那覇局長は中部病院との対話不足について「病院長会議なども含めて、必要に応じて頻繁に連絡していた」と否定した。死者17人を出したクラスターの対応には「フィードバックとか連絡が欠けていた。それが一番の原因」と、同様の説明を繰り返すだけだった。
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