米軍基地内に沖縄戦の戦争遺跡 立ち入り調査申請を米軍認めず


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米海兵隊の調査で確認された米軍キャンプ・ハンセン内の恩納岳の戦跡。斜面に掘り込まれた横穴で、日本軍が利用したとみられる=2020年3月18日(米海兵隊提供)

 米軍の調査で昨年3月、キャンプ・ハンセン内の恩納岳で沖縄戦の戦争遺跡が見つかった。これを受け、恩納村が沖縄防衛局を通して米軍へ現地への立ち入り調査を申請したが、米軍は目的地へ行く際の安全性の確保が難しいなどの理由で村の調査を断ったことが、12日までに分かった。沖縄戦から76年を経て体験者が高齢化し、戦跡の調査・継承が重要性を増す中、基地内の戦跡調査を、どう進めていけるのかが課題となっている。

 米軍が昨年3月に恩納岳で見つけたのは、沖縄戦で日本軍が構築したとみられる縦に掘った穴「たこつぼ壕」や横穴など。本島各地の少年らで構成された「第二護郷隊」が展開した場所と重なっており、村は戦争体験者の証言と照らして記録・継承するため、現地を調査したい意向だ。

 村は昨年9月までに防衛局を通じて米軍へ現地調査を求め、調査目的や調査に参加する職員の名簿などを提出した。名簿では、長浜善巳村長や職員ら計8人を報告していた。

 しかし、防衛局は今年4月、米軍からの回答として調査を受け入れられないことを伝えた。理由は(1)演習の着弾エリアのため、不発弾が広範囲に存在し、立ち入り者の安全が保証できない(2)現地への道は無く、地形が険しく、アクセスが困難で往復に長時間を要する(3)仮に立ち入り中に負傷者が出た場合、現地が密林のため、搬送が困難―の3点を挙げた。

 これに対し、村は今回の調査が難しいことは理解しているとした上で「状況が変われば立ち入れるようにしてほしい」と要望したという。

 村は米海兵隊が撮影した恩納岳の戦跡の写真について、沖縄防衛局経由で提供を受け、村博物館で展示を準備したが、新型コロナウイルス禍による緊急事態宣言期間中は展示を休止している。

 文化財調査や沖縄戦体験者への聞き取りなどをする村の担当者らは、現地調査を粘り強く模索したい構えだ。村教育委員会文化係長の崎原恒寿さんは「先人たちが残した物を記録し残したい。その中に戦争遺跡もある」と語る。

 「第二護郷隊」の当事者にも聞き取りをしてきた村史編さん係の瀬戸隆博さんは基地内の調査について「必要不可欠だ。長い年月をかけてでも文化財として調査したい。証言を聞いた者の責任だ。中南部とは違う恩納村の戦争の特徴を記録したい」と強調した。 (古堅一樹)