【号外】沖縄・奄美の世界自然遺産登録を決定 ユネスコ、多様な固有種を評価


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 オンラインで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会は26日午後6時半すぎ(日本時間)、「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄)を世界自然遺産に登録することを決定した。世界的にも希少な亜熱帯の森に、数多くの固有種が生息する生物多様性を評価した。

 国内の世界自然遺産は白神山地(青森、秋田)、屋久島(鹿児島)、知床(北海道)、小笠原諸島(東京)に続く5件目。日本政府が候補とした全件が登録されることになり、国内最後の自然遺産となる可能性が高い。

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 登録区域は、沖縄県の本島北部と西表島、鹿児島県の奄美大島と徳之島の4島にまたがる陸域の計約4万3千ヘクタールで、大部分が森林。かつて大陸とつながっていたこの地域は海面上昇で島となり、動植物はそれぞれの島で独自の進化を遂げてイリオモテヤマネコ、ヤンバルクイナ、アマミノクロウサギなど多くの固有種が生まれた。

 

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 琉球諸島は2003年、国内で世界自然遺産候補地に選定された。国内手続きを経て日本政府は17年、ユネスコに推薦書を提出したが、ユネスコの諮問機関は18年、区域が分散していて一体的な保全ができないこと、沖縄島北部の米軍北部訓練場の跡地が含まれていないことを問題視し、抜本的な見直しを求める登録延期を勧告した。

 日本政府は、米軍返還地を含めて区域を再編し、19年に推薦書を再提出した。諮問機関はことし5月「生物多様性の保全上、重要な地域」と評価し、登録を勧告した。

 

◆世界自然遺産登録決定を受けて各地の首長コメント

【沖縄島北部】
■国頭村の知花靖村長
国頭村を含むやんばるが世界自然遺産登録が決定され大変うれしい。先人たちが守り育んできた森が、世界的に価値があると認められて誇りに思う。長年にわたり登録を目指し、尽力した関係者に心からお礼を申し上げる。今後も豊かな自然の保全と利活用の推進、地域振興に取り組む。

■大宜味村の宮城功光村長
「奇跡の森・やんばるの森」の豊かな自然を守り、継承してきた先人たちへ感謝したい。風光明媚(ふうこうめいび)な塩屋湾に代表される大宜味村の山、海、里を連動させた体験プログラムを実践するなど、世界自然遺産への登録を好機として、全世界的な取り組みであるSDGsを意識しながら地域社会づくりにまい進したい。

■東村の當山全伸村長
 先人たちが守り育んできた森が世界に認められたことは大変喜ばしい。ノグチゲラ保護条例を制定するなど希少生物の保護にも取り組んできた関係者のみなさんに感謝したい。やんばるの森はさらに大きな可能性を秘めている。今後、この豊かな自然環境を村民や県内外の人々に感じてもらうため、適切な維持管理と環境保全を推進し次世代へ受け継いでいけるよう取り組んでいく。

 

【西表島】
■竹富町の西大舛高旬町長
 われわれが祖先から受け継いできた西表島の豊かな自然環境が、登録基準である「生物多様性」に関する顕著で普遍的価値があると認められた。誠に喜ばしいことだ。
 しかし、西表島では既に自然環境保全上や観光管理上の課題を抱えており、遺産登録によって西表島の自然が失われてはならない。
 遺産登録は町にとっても重要な節目だが、ゴールではない。登録を契機に一層取り組みを加速させ、今後も西表島の価値を世界へと引き継いでいくために、国や県、関係機関と共に束となって取り組んでいく。

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