温泉施設は21年度中に開業へ 米軍基地跡が癒やしのリゾート地に ギンバル訓練場返還10年


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
ギンバル訓練場跡地で、2021年度中の開業を目指して建設が進む温泉宿泊施設=28日、金武町

 【金武】金武町に所在した米軍ギンバル訓練場(約60ヘクタール)が2011年7月に返還されて、31日で10年を迎えた。跡地は「健康医療ツーリズム」の拠点化を目指してスポーツ・医療施設が整備され、温泉宿泊施設の建設も進む。返還時、「基地依存経済からの脱却の試金石」として、経済発展や雇用の拡大が期待された跡地利用の今を追う。

 ギンバル訓練場は1957年に運用が始まり、海兵隊の野戦やヘリコプターの離着陸訓練に活用された。1996年12月のSACO(日米特別行動委員会)最終報告で、ヘリパッドのブルービーチ移設を条件に返還合意。町は07年に条件を受け入れ、11年7月31日、54年ぶりに23ヘクタールが返還された。残る土地も13年9月までに返還が完了した。

 町は跡地利用で、健康・医療ツーリズムとリゾートを組み合わせた「癒やしの地」づくりを掲げた。最新の放射線機器を使ったがん治療を行うクリニックや、発達障がい児支援を担う海洋療法児童リハビリセンターなどの医療施設、ベースボールスタジアム、フットボールセンターといったスポーツ施設が建設された。

 国の沖縄米軍基地所在市町村活性化特別事業(通称・島田懇事業)を活用し、町が総額75億円かけて整備した。

 現在121の客室を備える温泉宿泊施設や、長さ600メートルの人工ビーチとシャワー施設などを有する「ギンバル海浜公園(仮称)」、多目的屋内運動場の整備が進む。温泉宿泊施設は本年度中の開業、公園と多目的屋内運動場は来年度中の使用開始を目指す。

 ベースボールスタジアムやフットボールセンターはプロ野球・サッカーのキャンプ地として活用され、その経済波及効果は年に1億7千万円とも試算される。温泉宿泊施設とビーチの完成を前に、町は「滞在型観光だけでなく、日帰り客も見込める」と期待する。

 課題は飲食店への誘客だ。店が少ない訓練場跡地から繁華街の新開地などに客を導くため、町は飲食店を含む町内観光施設マップの設置などを検討中だ。

 跡地開発について、地元・中川区の40代男性は雇用の拡大を期待する。「町内は建設業以外に若者が働ける場が少ない。飲食店や観光業者が増えたら、若者が安心して帰れる町になる」。金武町観光協会の山川宗仁会長(44)は「スポーツキャンプ地のイメージが定着し、基地の負の印象が転換できた」と評価した上で、経済・雇用の面では大型リゾートホテル計画の進展に期待する。

 リゾートホテル計画は、マレーシアの不動産会社トロピカーナが設計・施工しホテルチェーンのヒルトンが運営する計画で、12年に町と16ヘクタールの土地賃貸借契約を交わした。16年の開業予定が、大幅に遅れている。

 町は「ビーチ整備が前提の計画。トロピカーナ社とはビーチ完成後の整備に向けて連絡を取っている」と説明する。計画では客室約200室のホテルや住宅、結婚式場などを整備予定だ。山川会長は「完成すれば百人単位の雇用が見込め、一帯の商品価値も上がる。町は実現へ積極的に動いてほしい」と強調した。

 跡地利用計画は道半ば。人が集まる「癒やしの町」づくりへ、着実な推進が求められる。 (岩切美穂)