ハンドボール東江、失意越えて躍動 33年ぶり勝利は「誇り」<東京五輪>


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ポルトガルに競り勝って初勝利を挙げ、感極まる東江(33)=国立代々木競技場

 悔しさ、感謝、誇らしさ―。初の五輪を終えた東江雄斗の胸中には、さまざまな思いが去来した。「目標のベスト8にいけなくて悔しいけど、このチームで1勝できたことは誇り。コロナの中でプレーできたことに感謝したい」。すがすがしい表情で汗を拭った。

 前半を2点リードで折り返した日本。しかし司令塔の東江には直感があった。「このまま、そううまくはいかない」。体格差のあるポストを攻められて10分ほどで逆転され、追う展開に。残り約10分で東江が右45度を割って豪快に決め、同点。再び先行されたが、残り2分でまたも東江が正面から同点弾を突き刺し、勝ち越して逃げ切った。

 日本ハンド界にとって歴史的な勝利の立役者となった。「この1勝は自分のハンド人生にとってプラスになる」と感じる。ただ結果は予選敗退。「接戦で勝つことに恐れず、気迫を出すことが必要」と世界と戦うためのメンタル強化を今後のチーム課題に挙げる。

 小学生の頃に描いた夢は「代表のポイントゲッターになる」こと。五輪出場も地続きの目標だった。しかし、開幕数日前のけがで視界が曇った。「最初は本当に頭が真っ白になった」「ここまで頑張ってきたものを全て失った気持ちになった」。失意に暮れた。

 それでも根気強く治療を続け、第3戦で復帰。最終戦では今大会中最も長くプレーし、要所で4得点、勝負強さを発揮した。「多くの人が自分を試合に出すためにサポートしてくれた。監督も自分を信じてメンバーに残してくれた」と感謝の言葉が次々と口を突いた。

 県勢男子の五輪ハンドボーラーは自身が2人目。試合の度にSNSを通じて多くの応援メッセージが届き、勇気をもらったという。「自分のプレーを見た人が勇気を感じ、感動し、沖縄の子どもたちにとっての憧れになれたらうれしい」と爽やかな笑顔を浮かべた。
 (長嶺真輝)