【深掘り】サンゴ移植許可、国は「身内手続き」で反撃へ、県は正当性に自信


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 名護市辺野古の新基地建設予定地に生息するサンゴ類の移植許可を巡り、沖縄防衛局は2日、県が移植許可を撤回した処分の取り消しを求め、行政不服審査法に基づく審査を農相に請求した。移植許可を撤回した県に対し、間髪入れずに国が対抗措置を取った形だ。玉城デニー知事は審査で県判断の正当性を主張していく構えを見せた。農相は防衛局の主張を認めるとみられ、その後、県と国は裁判闘争に突入する可能性がある。

(左)報道陣に県の正当性を主張する玉城デニー知事=2日午後、県庁 (右)記者団の取材に応じる岸防衛相=2日午後、防衛省

 行政不服審査制度は、地方自治の観点から対等であるはずの県の判断を国が裁判を通さずに覆せるため、問題視されてきた。今年6月には、県の提案を受け、全国知事会が国への提言書に制度見直しを盛り込んだばかりだ。

■徹底抗戦

 国が早期の移植再開を目指す背景には、軟弱地盤に関係ない辺野古側の埋め立て工事も遅れていることがある。サンゴ移植後、予定している護岸工事をすぐに進める見通しだ。完成すれば、その護岸から土砂を大量に陸揚げし、辺野古側の埋め立てを加速したい考えだ。

 防衛省幹部は今回の護岸が「サンゴを移植すれば、すぐに工事ができる」と指摘。今後、地盤改良工事を追加する設計変更を県が不承認とした場合も「できる所を進めていく」と語り、設計が変わらない部分の工事は進めて完成を急ぐ絵を描いている。移植再開を急ぐ政府に対し、県も引かずに、徹底的に争う構えだ。サンゴをいったん動かせば元に戻らない。県関係者は「台風シーズンの移植は、サンゴに死んでと言っているようなものだ」と非難した。

■けん制

 防衛省関係者は「(県が許可条件として)明確な基準を示していたわけでもないのに、いきなり不許可とするのは乱暴だ」と県の対応を批判した。

 岸防衛相は2日の会見で、許可期間が7月末から2カ月で「夏季を避けると、許可されていないに等しい」と県を批判したが、県関係者は「期間を延ばすよう変更申請すればいい。詭弁(きべん)だ」と反論した。

 今後、実際に審査するのは、水産庁の職員だ。県関係者は「専門的な知識を有する水産庁の職員たちは、この時期の移植は不適切だと分かるはず。忖度(そんたく)せずにきちんと審査してほしい」とけん制した。

 政府が防衛局の主張を認めれば、県は訴訟や設計変更の不承認で対抗するとみられる。県幹部は防衛局の審査請求に「やってみたらいいんじゃないか。(防衛局が)自分たちで言ったことを守らなかっただけだ」と自信をのぞかせた。

(明真南斗、知念征尚)