児童が主体的に考えるカタチに 小学生へ平和学習 琉大と市史関係者が協働


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沖縄戦の専門家や琉球大学の学生らと協働して行われた平和学習の授業=6月29日、南城市立馬天小学校(南城市教育委員会提供)

 【南城】南城市立馬天小学校(嶺井靖之校長)は今年5月から7月にかけて、5年生を対象に、琉球大学教育学部の小学校教諭を目指す学生と、元南城市史編さん専門員と協働し、児童が主体的に考える平和学習に取り組んだ。学生を指導する山口剛史同大教授は「学校と大学、沖縄戦の専門家の3者の協働は、平和学習への取り組みの形として新しいものになった」と語っている。

 取り組みは、同校の米須清貴教諭が山口教授に協力を依頼したのがきっかけ。米須教諭は「戦争体験などを児童に一方的に伝えるこれまでの平和教育ではなく、他の科目の授業のように、児童が問いを持ち、主体的に考える平和学習にしたかった」という。

 授業では、今年3月に南城市教委が発刊した「南城市の沖縄戦 証言編―大里―」に掲載されている仲程シゲさん、瑞慶覧長方さん姉弟の体験記録を素材として、学生が作成したワークシートを使用した。学生たちは実際に教壇にも立ち、「もしあなたが長方さん、シゲさんだったらどうしますか」と、児童が主体的に思考できるよう働き掛けた。授業を通して、各クラス担任は児童一人一人が抱いた問いに寄り添い、それらの疑問に対する調べ学習も、学生がサポートに入りながら行われた。

 6月29日には「南城市の沖縄戦」を編さんした山城彰子さん、山内優希さんも授業に参加。2人と学生が講師となり、児童たちが抱いた疑問に答えるため、戦前の学校教育、日本兵の思想と行動、収容所での暮らしの三つに関するプレゼンテーションを行った。その後児童たちは、講師らに個別で質問を重ねた。

 宮城柚妃(ゆうひ)さん(11)は「戦前の小学校では、行進などで偽物の銃(木銃)が使われていたことや、日本兵が先輩に当たり前に暴力を振るわれていたことを不思議に思った。戦時中と今とでは全然違うので、(戦時中のことを)もっと知りたい」と語った。7月には学習のまとめとして、児童一人一人が、それまでの授業で学んだことや疑問に感じたことを文章にまとめた。

 米須教諭は「授業を通して子どもたちの戦争への理解が深まった」と話す。「全校で集まった平和集会の時には集中して沖縄戦の話を聞くようになった。国語、算数などの他教科のように、平和学習も時間をかけて授業を実施できれば」と期待した。

 講師を務めた琉大教育学部4年の冨名腰哲平さん(23)は「学校が所在する地域の沖縄戦を伝えることが大事だと思った。実際に現場に出た時、地域史などを活用しながら伝えていきたい」と語った。

 山口教授は、学生が現場の教諭や専門家と協働で授業を作り上げたことが大きな意味を持つと強調する。「さまざまな人と関わり、現場を体験したことで、実際に教壇に立った時への糧につながる」と語った。