菅義偉首相の退陣表明により、県内政局も一気に流動化している。菅内閣の支持率低迷で自民党は衆院選の苦戦が予想されていただけに、菅氏の辞任を「党を救う決断だ」(県連幹部)と受け止める向きもある。次の首相選びとなる党総裁選をてこに、党勢回復に期待も広がる。辺野古新基地建設を巡って安倍・菅政権と鋭く対峙(たいじ)してきた「オール沖縄」勢は菅氏の退陣に勢いづく一方で、自民党総裁選に国政野党の存在感が埋没することを警戒。沖縄から自公批判のボルテージを上げる。
衆院沖縄選挙区のうち、2~4区は自民公認候補と「オール沖縄」候補との事実上の一騎打ちが見込まれる。一方、県都・那覇が中心の沖縄1区だけは、保守の一本化調整が停滞し、前回同様の三つどもえの構図で突き進んでいる。
■逆風
4日朝、那覇市の鳥堀交差点で街頭演説に立った国場幸之助氏=自民=は、菅氏の辞任が選挙に与える影響を報道陣に問われても「これは分からない」と回答を避けた。
ただ、自民党県連内には「野党は批判の矛先を失った」として、政権与党への逆風がやむとの認識が大勢を占める。さらに菅氏の退陣は、下地幹郎氏=無所属=の自民復党を巡る議論にも影響を与えるという見方がある。
下地氏と衆院当選同期で近い関係にあった菅氏が、衆院選を前に総理・総裁の座から降りることになったことで、下地氏の自民復党は最大の後ろ盾を失うという見立てだ。下地氏の復党を支持する県内の経済人らが頼りとしてきた二階俊博幹事長の処遇が不透明なことも、そうした観測に拍車を掛ける。
下地氏は「オール沖縄に対抗するため保守中道がまとまるというのが(復党の)原点だ。中央の政局は関係ない」と影響を否定するが、下地氏を支える経済関係者は「タイムリミットは迫っている」と焦りを隠さない。経済界と議員経験のある重鎮らが近く自民県連に要請を起こすと明らかにした上で、「最後の要請になるだろう。進展がなければ、このまま下地氏支援で選挙をすることになる」と語気を強めた。
■戦略
オール沖縄陣営にとっては、官房長官時代を含め約9年にわたって沖縄政策を取り仕切ってきた菅氏の退陣は、衆院選を目前にした追い風と受け止める。
一方で、自民党が総裁選を通じて刷新イメージを打ち出そうとする戦略への対抗策が課題となる。国場氏と下地氏が激しく票を掘り起こす1区の保守対決の動向も注視しながら、赤嶺政賢氏=共産=は「新しい総理を選んだからといって、菅内閣の悪政の責任から逃れられるわけではない」とけん制する。
「総裁候補は今後、メディア露出も増える。こちらも街頭での訴えで露出を増やすしかない」(オール沖縄幹部)と強調した。
(大嶺雅俊)