【独自】オール沖縄離脱「翁長丸に乗っていたら…」金秀会長が語った強い不満


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 「これまでのような支援のやり方はできない。これからは経済が大切で、自分の後ろにはたくさんの従業員もいる」。通常国会が閉会した直後の7月、金秀本社(那覇市旭町)の会長室で向き合った赤嶺政賢衆院議員(共産)に対して、金秀グループの呉屋守将会長は端的に語ったという。「オール沖縄」を支援する代表的な企業グループが明確に離脱の意を示した瞬間だった。

「オール沖縄」候補の選挙応援に駆け付けた翁長雄志氏(左)、呉屋守将金秀グループ会長=2016年5月

 名護市辺野古の新基地建設反対を掲げ、県政与党や企業、労組などで構成する超党派の枠組み「オール沖縄」。安全保障の考え方などで違いはあったものの、故・翁長雄志前知事の下に「腹六分、八分」で結集し、参画した複数の企業が運動の原動力となった。

 しかし、2018年の翁長氏の死去後、県内ホテル大手・かりゆしグループがオール沖縄を離れ、企業が支える体制にほころびが見え始めた。企業の離脱によって、オール沖縄は革新主導の「政党色」が一層強まっていった。

 「翁長丸」

 「『翁長丸』に乗っていたら、隣に赤い服を着た人がいた。やっぱり最終目的地までは、一緒に乗らないでおこうと」。呉屋氏は共産など革新の政党を「赤い服」と表現し、オール沖縄の現状に強い不満を漏らす。保守中道路線への回帰を強く打ち出し、来年の知事選も玉城デニー知事の支援は明言しなかった。

 金秀の離脱で、オール沖縄は翁長知事誕生前の「革新共闘」に戻るとの見方も広がる。昨年9月に玉城知事の後援会長を辞任した後、呉屋氏は「経営に専念させてほしい」と何度も口にした。オール沖縄からの離脱は「既定路線」との受け止めも県政与党内にはある。

 オール沖縄の幹部からは「辺野古ではまだ一致している。完全に分かれたわけではないと理解している」と今後に望みをつなぐ声も上がる。ただ、保守中道への支持を打ち出し、事実上、自民党候補の支援に回ることに「辺野古を推進する自民を支持するのは筋が通らない。失望した」(県政与党)と憤りも広がる。

 重要選挙を控える中、呉屋氏の離脱が与える影響に危機感も渦巻く。別の幹部はこう強調する。

 「呉屋氏や翁長氏らがつくった『オール沖縄』の果実を食べるだけでは残っていけない。知事選に向けてオール沖縄を厳しく総括すべきだ」

 複雑な事情

 金秀の支援が決定的となった自民党県連側も複雑な事情を抱える。三つどもえの様相となっている衆院選沖縄1区で、金秀は国場幸之助氏(自民)の支援に回ることになる。

 ただ、金秀は、下地幹郎氏(無所属)の自民党復党を目指す「保守合同の会」の国場組や大米建設と対立関係が続いている。自民党県議は「金秀に寄り過ぎて国場組などの反発を生むことは避けたい」と本音を吐露する。

 自民県連幹部は金秀の支持表明を「応援してもらう分には拒むことはない」と受け止めた。一方で「元々は自分たちから離れていった。正式な連絡がない中で、こちら側からアプローチをすることはない」とし、一定程度の距離を保つ構えを示す。各企業の立場や、政局が複雑に絡み合う中、金秀の支持表明は、自民党内の力関係も左右する可能性がある。
 (池田哲平、大嶺雅俊)


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