沖縄のシングルマザーが精肉店を始めた理由 焼くだけでOK「半そうざい」の販売も


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精肉店「ちゅらさんミート」をオープンした店主の宮里乙美さん。「女性の頑張りを応援したい」と意気込む=8月24日、沖縄市泡瀬

 【沖縄】沖縄市泡瀬の美里工業通り沿いにこのほど、シングルマザーの宮里乙美さん(46)が精肉店「ちゅらさんミート」をオープンした。力仕事が多く、男性が多い精肉業界でこの店を切り盛りする。身長145センチと小柄で、子ども2人を育てた宮里さんが開いたこの店には、「働く女性を支えたい」という強い思いが込められている。

 離婚後、一家の大黒柱として仕事や育児に追われた。子育てをしながら仕事を掛け持ち、昼は弟が経営する精肉店で、夜はスナックで働いた。

 精肉店を退職後は市内のホテルでベッドメイキングの仕事に就き、これまで通り昼と夜のダブルワークを続けていた。だが新型コロナウイルスの影響で状況は一変。観光客の減少でホテルの仕事は減り、スナックもスタッフの感染防止の観点から休業。突然仕事がなくなった。

沖縄市の美里工業通り沿いにオープンした精肉店「ちゅらさんミート」

 「自分がやりたいことって何だろう」。立ち止まる時間ができたことで、自身の経験と知識を発揮できる仕事に専念したいと考えた。約10年間精肉店で働いた経験や、接客業・清掃業などで培ったノウハウを生かし、女性目線の精肉店を開きたいと決意した。

 宮里さんは「自分も子育てとダブルワークの両立で苦労した。働く女性にとって食事の準備が少しでも楽になるような精肉店を作りたかった」と振り返る。

 ただ、コロナ禍の創業は簡単ではなかった。宮里さんは「融資の相談に初めて行った時、『コロナ禍で開業? 女性が精肉店?』と驚かれた」と苦笑いする。沖縄商工会議所の創業支援窓口のサポートを受けながら事業計画を練り、今夏に融資が決まった。融資を受けるまでの間は、経営のノウハウを学び「お肉ソムリエ」の資格も取得した。

 ちゅらさんミートでは従来の精肉に加え、揚げるだけ、焼くだけといった「そうざい半製品」を強化している。食事の準備を楽にできるような商品開発で、働くお母さんを始め全ての人の食卓をサポートしたい考えだ。

 スタッフは全員女性で、その中にはシングルマザーも多い。宮里さん自身が子育てを優先して仕事ができた環境にあったように、ちゅらさんミートでも女性が働きやすい環境を整えたいという。「お客さんだけでなく、働く人も笑顔になれる店にしたい」と話す。

 「これまで私がまわりの人に助けてもらった。今度は私が女性の頑張りを応援する番だ」と前を見据えた。
 (石井恵理菜)