沖縄への鉄軌道導入、経済効果は微増 事業目安を大きく下回る 内閣府20年度調査


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 【東京】内閣府は1日、2020年度に実施した沖縄での鉄軌道導入に関する調査結果を公表した。超伝導リニアに使われる「磁気浮上方式(HSST)」と呼ばれる車両技術を導入するなどコスト縮減を図った結果、導入コストに対する経済効果を示す「費用便益比」(B/C)は0・73だったとした。「高速AGT」と呼ばれる車両技術の導入やルート変更を加味した前年度の調査に比べて0・02改善したが、事業実施の目安となる1は大きく下回った。

 内閣府の調査は、名護市~うるま市~那覇市~糸満市を結ぶルートを想定した。本年度新たに加味したのは、(1)需要量に応じた駅施設規模の精査(2)概算事業費の精査(3)最新技術車両の導入(4)交通システムの絞り込みや事業スケジュールの精査―の4項目。

 このうち概算事業費は、最新の国勢調査の結果や本島北部地域で大型ホテルの新設が相次いだ点などを考慮した。その結果、前年度調査比330億円減の6350億円となった。

 開業後40年間の累積赤字額は、同900億円増の2960億円。HSSTは、前年度調査で検討した高速AGTよりも運営費が割高になるため、赤字幅が膨らんだ。

 一方、内閣府は、B/Cが向上した要因として、需要に合わせた駅舎の規模調整、運行列車の編成両数の見直しや低コスト工法の採用などでコスト縮減を図った点を挙げた。

 内閣府は本年度も調査を続ける。新たな調査では、本島北部の世界自然遺産登録による観光への波及効果などの好材料がある一方、新型コロナウイルスの感染拡大による観光客数の落ち込みなどマイナス面も考慮される。数字にさらなる改善がみられるかは不透明な状況だ。