【深掘り】玉城県政誕生から3年 揺らぐ「オール沖縄」再構築の可能性は


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知事選当選が確実となり、支持者と万歳する玉城デニー氏(前列中央)=2018年9月30日、那覇市古島の教育福祉会館

 名護市辺野古の新基地建設反対を掲げ、過去最多となる39万余りの票を獲得して始動した玉城デニー県政誕生から4日で3年が経過した。一方で玉城県政を支える「オール沖縄」の体制が今、揺らいでいる。保革を超えた枠組みとして生まれた「オール沖縄」。その保守・経済界の顔役だった金秀グループ(呉屋守将会長)の離脱に象徴されるように保守系離れが進み、退潮も指摘される。辺野古反対を一致点にする体制ゆえ、辺野古以外の基地問題における対応の難しさもあり、革新支持層にも戸惑いが広がる。来年秋に迫る知事選で玉城知事の2期目出馬は「既定路線」(県政与党幹部)とされる中、「オール沖縄」は正念場を迎えている。

 ■故翁長氏の思い

 「ウチナーンチュが一つになって力を合わせていけば、難しい問題でも乗り越え、解決することができると話した翁長(雄志)前知事の思いが『オール沖縄』という運動にもつながっているだろうと思う」

 就任3年に合わせた1日の会見で「オール沖縄」について問われた玉城知事は、体制を築いた故翁長氏の「イデオロギーよりアイデンティティー」との言葉に触れつつ、そう答えた。

 ある「オール沖縄」幹部は「『オール沖縄』は県民の思いや覚悟だと翁長氏は話していた。辺野古反対の民意は強い。金秀離脱は残念だが、その意味からすれば表層的な影響しかない」と、組織弱体化との見方を否定した。

 一方で内部には、当初の理念からかけ離れた形で「オール沖縄」という言葉が使用されているとの見方もある。ある幹部は「選挙で使ってはいけなかった。一部は政党色を消すために多用している。それが県民に見透かされている」と述べ、理念との乖離(かいり)が保守系が離れる遠因にもなっていると指摘する。

 ■「負の側面」

 重要課題に掲げる辺野古の新基地反対でまとまるため、「腹八分、腹六分」で他の課題を脇に置く形で構築された「オール沖縄」。その「負の側面」は、保守中道を掲げる玉城知事が自衛隊の先島配備に踏み込んだ発言をしないことや米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添市移設を容認していることへの不満が、革新支持層にうっ積するという形で表れている。

 自衛隊配備が進む先島のオール沖縄関係者は「自衛隊配備問題に関与してこない知事は応援できないとの声も受ける。辺野古で本島との温度差がある先島では『オール沖縄』との言葉は使えない」と明かす。

 辺野古以外に関する課題では、組織内部での違いもしばしば浮き彫りになり、各種選挙での支援態勢にも影響を与えている。そのため与党内には組織として辺野古以外まで問題意識を広げた対応を求める意見もある。ただ、「辺野古以外の議論も統一しようとすれば前提が崩れ、『オール沖縄』が終わる」(与党県議)との懸念もあり、一致点を見いだすのは難しいのが現状だ。

 ■組織再構築

 体制内に課題や矛盾を抱えながらも、政権と対峙(たいじ)できる体制維持の必要性では一致しており、来年の知事選を見据えて、組織の再構築を図ろうとする動きもある。県政与党内では他の与党会派と距離のある「会派おきなわ」との関係強化を図ることを目的にした会派再編の動きが現在進行形で進む。

 分裂した社民党からの議員合流などを経て、新たに始動した国政野党第一党の立憲民主党は、県議会会派の結成や那覇市議選での全員当選などで「オール沖縄」内での存在感を増しており、今後の選挙結果次第では影響力が高まる可能性もある。

 変容する「オール沖縄」だが、組織が再びまとまるには玉城知事の求心力が必要だとの共通認識が内部にはある。玉城知事は会見で「力の足りないところは日々痛感している。一つ一つ愚直に取り組んでいく姿勢が大事だということを自問自答している」と述べた。

 その言葉通りの姿勢を保ち、指導力を発揮できるか。知事の残り1年の姿勢や県政運営が「オール沖縄」の行方を左右しそうだ。 (大嶺雅俊、明真南斗)

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