【金武】金武町の水道水や地下水源から国の暫定指針値を超える有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)が検出された問題で、町は水道水を全て県企業局水に切り替えるための送水管整備を前倒しする方針を決めた。2023年度中の完成を目指し、その間は地下水の取水を順次停止し県企業局水で補う。一方で、町が「PFASの発生源の可能性が高い」としている米軍キャンプ・ハンセンには30年以上前から、100%県企業局水の水道水が提供されている。米施政下での米軍の水道施設接収により、日本復帰後も地下水源に頼らざるを得なかった町民からは「水の安全」に対する不公平さを指摘する声が上がる。
【ニュースの一報】金武町の水道水からPFAS 指針値1.4倍 町は昨年把握
「交代してほしい」
県企業局から町に送られる水1日平均約4500トン中、約2千~2300トンはキャンプ・ハンセンに供給されている。基地内の水道水は全て県企業局水で、地下水は混合されていない。
県企業局によると、キャンプ・ハンセン内の水道水が全量、県企業局水となったのは遅くとも1987年から。金武ダムの水を浄化し基地に供給していた旧金武浄水場が同年廃止され、同局が基地内に建設した調整池を経由して旧石川浄水場の水を供給し始めた。
一方、PFAS問題に悩まされている金武区・並里区では、51年の米軍による水道施設接収を機に38~45年間にわたり、水道水を地下水源のみに頼らざるを得なかった。89年に金武区の簡易水道が町の水道事業に統合され、ようやく県企業局水との混合が始まった。
「なぜ汚染源の可能性が高い基地内が安全な水で、区民はPFAS混じりの水なのか。納得できない。交代してほしい」と話すのは金武区の40代女性。町内の男性も「現実的には難しいが、基地と水を交代してほしいと当然思う。みんな感じることではないか」と不信感を語った。
強い姿勢
現在、町は水道水を、県企業局水と浄化した地下水を混合して町民に供給している。水需要の増加などに対応するため、県企業局水への全面切り替えに向けた11億円規模の施設整備を22年度から6年間で計画。防衛省の補助金を見込む。
「町民の健康を守るため、施設整備が急務だ」。PFAS検出を受けて6日、沖縄防衛局に出向いた仲間一町長は、計画のうち送水管整備を本年度に1年前倒しすることへの協力を強く求めた。補助金措置の前倒しについて、小野功雄局長は「協力したい」と返答。仲間町長は県企業局から供給量を増やす確約も取り付けた。
検出数値の公表遅れで町民の批判を浴びた仲間町長が政治決断し、両局に働き掛けた格好だ。町長の強い姿勢に、政府関係者は「米軍との因果関係は証明されていないが、(突っぱねて)町長を困らせる訳にもいかない」と語った。
町上下水道課は既に、地下水源の取水制限に取り掛かっている。同課職員は「PFASの値をできる限りゼロに近づける。安全な水を届けるため努力するだけだ」と説明した。一方、町内の水道水からのPFAS検出を受け、在沖米海兵隊は「原因は基地内で特定できなかった」と一方的に発表した。だが、調査内容など詳細は示していない。本紙は基地内での泡消火剤の使用の有無について問い合わせているが17日現在、海兵隊の回答はない。基地への立ち入り調査を求める町や県に対し、米軍の誠意ある対応が求められている。
(岩切美穂、知念征尚)
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