パインの葉からストロー、なぜ始めたのですか? 「フードリボン」社長の宇田悦子さんに聞く


社会
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 収穫後に廃棄されるパインの葉の繊維からできたストローの開発・販売を手掛け、循環型社会の実現に貢献するフードリボン(大宜味村)。2017年に同社を設立して「優しい素材を世界に流通させたい」と展望する宇田悦子社長(36)に、起業のきっかけや今後の展望を聞いた。

 ―活動の経緯は。

 「3人目の子どもが生まれた時に、11年間勤務した美容大手を辞めた。その後は美容系の個人事業を立ち上げ、地域の未利用産物を使ったプロジェクトにも関わった。その時に沖縄のシークヮーサーという魅力ある素材に出合い、フードリボンを立ち上げた」

 「大宜味村に足を運び、自然の恵みをよく知っている元気いっぱいなおじぃとおばぁに、いろいろ教えていただいた。多くの方と交流し、畑で採れた食べ物など自然の恵みを近所と分け合う姿を見ていて、この場所で本格的に仕事をしたいと思うようになった。シークヮーサーの果汁や絞りかすを使った、アロマオイルなどの開発を始めた」

 ―なぜパインの葉に注目したのか。

 「フィリピンの北部地域では、パインの葉から繊維を取り出し、生地に仕立てる伝統産業がある。ごく少量しか生産できない貴重なもので、ヨーロッパにも高級品として輸出されていた」

 「東村役場の方や農家さんに話を聞くと、パインの葉は繊維が強く、なかなか土にかえらない。トラクターで細かくきざんで畑に捨てていると聞いた。使い道があるわけではなく、どこかに捨てて燃やすことができるわけでもない。畑に捨てられ、山積みになった葉を活用できないか考えるようになった」

 ―今後の展望について

 「日本化学繊維協会の2017年の調査によると、生産される主要な繊維のうち7割程度が化学繊維で、3割は天然繊維。天然繊維100%の服は全体の1割程度と推測される。消費者にはパインの葉を活用した商品を手に取ってもらい『環境負荷を減らす』という私たちのメッセージを受け取ってほしい。利益追求で販売してもうけるという形ではなく、自然の恵みを余すことなく使って、環境問題を見直すきっかけになるような製品を作りたい」

 「ほかの企業とパートナーになり、フォークやナイフなどのカトラリーや弁当容器など、さまざまな形でコラボして仲間を増やすことも目標だ。子や孫、次の世代に自然の恵みの素晴らしさを伝えていきたい」
 (聞き手・喜屋武研伍)


 うだ・えつこ 1985年3月20日生まれ、神奈川県出身。川崎市内の商業高校を卒業後、美容大手のTBCグループ(東京都)に入社。2015年に3人目の出産を機に退職し、美容系の個人事業を立ち上げた。17年にはフードリボンを設立。20年からパイナップルの葉の繊維を活用したストローを開発・販売している。