持ち株会社に移行せず 琉球銀行 新本店にグループ集約


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琉球新報のインタビューに答える琉球銀行の川上康頭取=那覇市東町の琉銀仮本店

 琉球銀行(那覇市)の川上康頭取が18日までに琉球新報のインタビューに応じた。全国の地銀で持ち株会社体制への移行が進む状況について、「当面は目指さない」と述べ、琉銀を頂点とする現行のグループ体制を維持するとした。2025年に完成する新本店に全グループ企業を集約することで、一体的運用によって相乗効果を発揮し、収益確保につなげたい考えだ。

連携強め収益力強化

 長引く低金利政策や異業種からの参入などを背景に銀行間の競争は激化している。地銀改革で各行の動向に注目が集まる中、銀行以外の非金融サービスの拡充によって収益力を強化しようと、銀行を子会社化するホールディングス(HD)化の流れがある。今月1日には、沖縄銀行(那覇市、山城正保頭取)を傘下に置く持ち株会社「おきなわフィナンシャルグループ(OFG)」が発足したほか、北国銀行(金沢市)、十六銀行(岐阜市)も体制移行している。

 こうした流れに対し、川上頭取は「ホールディングス化の目的として、ガバナンスをどう効かすのかということだと思う。銀行法の改正でHD化しなくても、できることはほぼ変わらない」と指摘する。

 新本店でのグループ企業集約について、琉銀は2017年までに関連子会社の全株式を取得。3年ほど前からグループ間の人事交流を推進し、企業文化の融合を推進する。(1)法人関連の手数料ビジネス(2)カード関連ビジネス―を収益の柱に掲げており、集約化を通してこれらビジネスに関わるグループ間の連携を強め、収益力の強化を図る。

 川上頭取は「フロアの壁を極力取り払い、関連会社も琉銀の1事業というイメージで一体化を図る。内部ネットワークも統合して情報伝達も一元化していきたい」と述べた。

 コロナ禍による事業者支援では、他の金融機関と協調しながら借り入れの一本化や返済期間の長期化を図る考えを示した。

◆手数料、カードで成果 川上頭取 一問一答

 川上康・琉球銀行頭取へのインタビューで、一問一答は次の通り。
 

 Q:県内の金融環境をどう見ているか。
 「コロナ禍で観光が最もダメージを受けた。完全回復にはインバウンド(訪日外国人客)復活が大前提だが、最低でも2年はかかる。コロナ前の状態に戻すためには数年かかるという前提で、取引先企業の支援活動をしなければいけない」

 Q:琉銀が果たす役割は何だと考えているか。
 「多くの取引先は複数の金融機関と取引があるので、足並みをそろえて協調を取り付けたいと思い、現在動きを始めている。コロナ禍で事業意欲を失った事業者もいる。そうした顧客には、事業承継や投資会社を使ったスキームも準備を進めている」

 Q:金融機関として、持続可能な経営基盤の整備に向けた取り組みは。
 「収益の柱は2本。法人に対する手数料ビジネスは着実に収益を上げている。現在5億円を突破した。カード関連ビジネスでも数億円の収益を上げられるようになった。マイナス金利で経営環境が厳しくなることを想定して準備を進め、その成果が現れている」

 Q:沖縄銀行が持ち株会社体制に移行した。
 「結論から言うと、ホールディングス化は当面目指さない。業務範囲については、影響はないと思う」
 「5年前から、子会社を一体化するというイメージを持った取り組みを進めている。そのために関連会社の持ち株比率を全て100%にした。(2025年完成予定の)新しい本店には、関連会社全てが入居する。3年ほど前から相互で人事交流しており、企業文化の融合を図っている。そうしたアプローチでグループ会社のあり方を考えてきた。ホールディングス化が可能になったが、当面移行する考えはない」

  (聞き手 小波津智也)