【深掘り】防衛省、民間港使用を常態化させる思惑 沖縄県は法規定で許可


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出港の準備に取りかかる自衛隊員ら=19日午後4時40分ごろ、石垣市の石垣港

 19日に始まった自衛隊統合演習(実動演習)での民間港の使用に関し、県などは「不平等取扱」を禁止する港湾法の規定で、使用を許可せざるを得なかったとみられる。県管理の中城湾港では21日に自衛隊車両約80台を下ろす予定だが、知事の許可が必要となる弾薬など危険物搭載はない。ミサイルなどを装備する艦艇も弾薬の積み降ろしがない限りは自治体の許認可対象にならないとされる。

 県によると、中城湾港の新港地区では2020年度に自衛隊関連の艦船の入港が数十件あった。港の使用申請に対して、港の形状などから受け入れが困難な場合を除き、不許可にするのは困難だったとみられる。

 県民の自衛隊民港使用への懸念は根強く、港湾会社は従業員らの不安の声を防衛省に伝えていた。関係者によると、中城湾港への部隊輸送で、九州の防衛施設から装甲車「16式機動戦闘車」を運ぶ計画があった。MCVと呼ばれ、高い機動力と戦車並みの火力を持つ。105ミリ砲が搭載され、見た目も戦車のように物々しく、県内の反発を受けて防衛省は県内への持ち込みを中止した。

 ただ、計画が修正されたが、民間港の使用そのものは断念しなかった。背景には、自衛隊が「いつでも沖縄の港を使える環境にしたい」(防衛省関係者)という思惑もある。常態化させ、持ち込む装備を拡大させる構えをみせる。

 自衛隊や米軍の民間港使用に関し、県外では自治体が懸念を表明した例もある。2009年に米第7艦隊の旗艦・ブルーリッジが長崎港に寄港する前、長崎県と長崎市は「平和を願う被爆地の市民感情に配慮してほしい」と米側や外務省に入港回避を要請した。

 09年の寄港は強行されたが、米軍艦艇はそれ以降長崎港には寄港しておらず、自衛隊の護衛艦寄港も縮小傾向にあるとみられる。米軍を監視する市民団体「リムピース佐世保」の篠崎正人編集委員は「世論を背景とした行政の姿勢は、米軍や自衛隊による民間港使用に対して一定の歯止めとなり得る」と指摘した。

(塚崎昇平、明真南斗)