ヒト組織の企業提供、琉大が全国初の体制構築 再生医療推進へ倫理課題審査


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 桑原 晶子
製薬企業へヒト細胞を提供できる体制を提案し、概要を説明する琉球大学大学院医学研究科の清水雄介教授=6日、西原町の同校

 沖縄県の琉球大学は6日、再生医療に用いるヒト組織を、製薬企業に提供できる体制を国内で初めて構築したと発表した。国内では組織や細胞提供に関する法律が未整備なため、倫理的観点から組織提供を受けて再生医療等製品をつくることが困難だった。琉球大は提供プロセスや提供後の利用状況など倫理面を含めて審査する独立した委員会を付属病院内に設置。ヒト組織利用の透明性を担保した適切な提供が可能になったという。

 製薬会社がヒト組織を入手しやすくなるため、再生医療の製品開発の加速が期待される。枠組みを利用した1例目として11月、ロート製薬に脂肪細胞を提供した。

 琉球大は2018年、国の日本医療研究開発機構(AMED)の事業採択を受け、体制整備に取り組んできた。倫理的課題解消のため、医師の他に弁護士、有識者らで構成する「産業利用倫理審査委員会」を設置し、提供目的や提供プロセス、利用状況も確認できるように体制を整えた。

 製薬企業とやりとりする窓口として「幹細胞プロジェクト みらいバンク」を新設。企業の提供依頼を受けると「みらいバンク」が委員会と調整を進め、企業は組織を採取した院内の各科と共に委員会に申請する。その後、委員会が審査して組織提供を認めれば、企業に組織が提供される流れ。 (嘉数陽)