特別賞に琉球新報「空自PFOS流出」報道 新聞労連ジャーナリズム大賞


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飛散した消火剤からPFOSが検出されたことを報じる琉球新報紙面

 新聞労連(吉永磨美中央執行委員長)は18日、平和や民主主義の発展、言論や報道の自由に貢献した記事などを表彰する第26回新聞労連ジャーナリズム大賞の選考結果を発表した。琉球新報の「航空自衛隊那覇基地から流出した泡消火剤に有害物質が含まれていることを突き止めた一連の報道」を特別賞に選んだ。

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 一連の報道の発端となった空自那覇基地から泡消火剤が流出、飛散する事故が起きたのは2021年2月26日。本紙記者が現場近くから採取した泡を京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)が分析した結果、有害性が指摘される有機フッ素化合物PFOS(ピーフォス)が検出された。本紙は同3月10日付紙面でこの事実を報じた。当初、空自は「PFOSは含まれていない」としていたが、本紙報道を受け説明を一転、PFOS含有を認め謝罪した。

 大賞は毎日新聞の「特権を問う~日米地位協定60年」だった。

 選考委員は受賞理由について「空自のリリースの虚偽を明るみに出した。有識者の分析から実際には有害物質が含有されていたことを突き止め、防衛相の謝罪、全国の自衛隊基地の調査につながった。権力側の発表や言い分をただ待ち、うのみにするだけではなく、能動的に調べていくジャーナリズムの基本姿勢を貫いた結果、放たれたスクープであり、当局発表を常に疑うことの重要性を改めて感じさせられる」と評価した。

 同賞には今回24点の応募があった。その他の受賞作は次の通り。

 人権を守り、報道への信頼増進に寄与する報道が対象の第16回疋田桂一郎賞は、共同通信の石川陽一記者による「私立海星高いじめ自殺問題を巡る一連の報道」。優秀賞は沖縄タイムスの「『防人』の肖像 自衛隊沖縄移駐50年」、信濃毎日新聞の「連載キャンペーン『五色(いつついろ)のメビウス ともにはたらき ともにいきる』」。

 特別賞は他に、北日本新聞の宮田求記者による「神の川 永遠に-イ病勝訴50年」、北海道新聞の川浪伸介記者らによる「『核のごみ』の最終処分場選定に向けた全国初の調査開始を巡る一連の連載など」が選ばれた。


 

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