「取り分なくない?」沖縄出身のギタリストが売り上げのほとんどを寄付する理由


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
コロナ禍で苦境にあえぐ音楽関係者を支援しようとCDの売上金額をライブハウスに寄付する活動に励んでいるryu-yaさん(提供)

 コロナ禍で苦境にあえぐ音楽関係者の支援に励む沖縄県出身者がいる。関東を中心に活動する読谷村出身のギタリストryu-yaさん(29)は、2020年からCDの売上金をライブハウスなどに寄付する活動を始めた。「やらない偽善よりやる偽善。アーティストがアーティストを続けられる仕組みをつくりたい」。無名のアーティストながらその思いは共感を呼び、既に寄付総額は85万円を超える。

 高校卒業後、上京して音楽活動を始めたryu-yaさん。新型コロナウイルスの感染が広がり始めた20年3月、音楽の仕事がゼロになった。他の仕事もしていたが不安は渦巻くばかり。「好きな音楽のために。自分がお世話になったライブハウスのためにも何かやりたい」。CDを制作し、売上金を寄付することを思いついた。

 自ら歌う『君と僕の希望の歌』のほか、自身が作曲し賛同するアーティストが歌う計11曲を収録した同名のアルバムを制作。1枚3500円で同年7月から販売を開始した。これまでにアルバムを第4弾まで制作し、売り上げは100万円を超えた。広告宣伝費などを差し引き85万円を東京や愛知、大阪のライブハウスなどに寄付した。

 「取り分なくない?」。周囲からそう言われることもあった。実際、ライブハウスに寄付はできたものの、制作費を含めると赤字だ。こんな活動を始めると、冷ややかな視線を送られることも承知で「微妙だと思うならこの話は聞き流してもらっていい。少しでも共感できる部分があるなら力を貸してほしい」と飾らずに訴える。

 活動への共感は少しずつ広がり、ryu-yaさん自身も注目され始めた。プロジェクトの代表曲『君と僕の希望の歌』はテアトルアカデミー制作の舞台『オノマトペイント~ソラノアカリ~』のエンディングテーマとなり、日本のワインを主題にした今年公開予定のドキュメンタリー映画『Vin Japonais』の主題歌やBGMを任されるなど、仕事の幅が広がった。

 ライブハウスへの寄付企画も実績が認められ、昨年11月に愛知県で開かれた名古屋青年会議所主催の「SDGs実践コンテスト」では優秀賞に輝いた。今後も同様の取り組みを続け「持続可能な社会貢献を通じて、アーティストも豊かになるビジネスモデルを構築したい」と語る。今後は沖縄でも活動を広げる考えで夢はさらに膨らむ。

 CDはryu-yaさんのwebサイトから購入できる。https://www.ryu-ya.online/
 (仲村良太)