現職大敗に「まさか」 南城市長選、瑞慶覧陣営のほころび<明暗…名護・南城市長選>


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 「開票が終わるまで勝てると思っていた。まさか1689票差もつくとは」―。23日の南城市長選挙投開票から2日たった25日、敗れた瑞慶覧長敏氏(63)は悔しさをにじませながらも、淡々と語った。4年前と同じ顔ぶれで、前職の古謝景春氏(66)との闘いとなった選挙戦は「盤石」だと自負していた。だが、水面下では市政運営で生じた「しこり」が支援者らの足を止めた。暮らしの向上を掲げ、徹底して地域回りを展開した古謝氏の選挙運動に足元の支持層は切り崩されていた。

落選が決まり、事務所の外で待つ支持者らに頭を下げる瑞慶覧長敏氏(左)=23日午後10時35分、南城市大里仲間の選挙事務所(又吉康秀撮影)

 瑞慶覧氏の支持層にほころびが生じたのは2020年。公立幼稚園を公設民営型の「認定こども園」とする議案を巡り、瑞慶覧氏は1園を公立として残す案を表明した。これに対して、与党市議の5人全員が2園を公立とするよう求め、瑞慶覧氏と対立。結果的に公立の存続は1園のみと決まり、与党市議との間でしこりが残った。瑞慶覧氏は18年選挙で、民営化された保育園の公立運営を復活させると掲げていたが実現せず、結局は幼稚園の民営化にも着手した。支持者からは批判も強まっていた。

 それでも、昨年6月に古謝氏が出馬表明して以降、与党市議らは瑞慶覧氏の支援を決定し、精力的な運動を展開。選挙期間中は玉城デニー知事、照屋義実副知事も応援に連日入った。古謝氏の前市政の運営に反発も根強く、与党市議らに手応えは十分にあった。ある市議は認定こども園の問題を念頭に、こう選挙戦を総括する。「(前回よりも)支持者の熱量が減ったと思わざるを得ない。選挙運動に影響を及ぼしたかもしれない」。

 12月19日、古謝氏の決起集会に集まった支持者を前に、自民党県連の島袋大幹事長がげきを飛ばした。「4年前、敗れた悔しさを忘れてはいけない」。支持者からは大きな歓声が上がり、会場は熱気に包まれた。前回、65票差の僅差で敗れ、雪辱に燃える古謝氏支持者らの勢いは最後まで衰えることはなく、うねりをつくりだしていく。

 約70の行政区すべてに責任者を配置し、古謝氏は地域を隅々まで駆け回った。週3回の手ぶりや企業周りは欠かさず、自らの政策や南城市の将来像を丁寧に訴えた。選挙期間中、古謝氏の選対本部長を担った座波一県議は「前回、瑞慶覧氏にいた企業が、こちら(古謝氏)側にきている」と明かしていた。新たな票の掘り起こしに加え、市民生活向上を訴える古謝氏の政策は現職批判の受け皿へとつながった。

 選挙結果について、瑞慶覧氏を支援していた「オール沖縄」勢力は「(名護よりも)南城市長選の方がショックが大きい」との受け止めが広がる。オール沖縄の県議は、南城市長選の結果について「前職(古謝氏)との選挙戦で勝てると確信していた。2敗は運動の弱さからきている。あちら(自公)が強いというよりは、こちらが弱い」と肩を落とした。
 (金城実倫)


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