【記者解説】沖縄振興関連法の改正案、施策の実効性が不可欠 県の主体性も重要に


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 新たな沖縄振興計画の根拠法となる沖縄振興特別措置法など、沖縄関連法の改正案が固まった。

 改正案には、岸田文雄首相が国会でも推進に意欲を示した「北部振興」が努力義務とされ、「特区・地域制度」の新たな認定要件には「付加価値増」「給与増」が加わった。いずれも、地域間格差や県民所得の向上など、半世紀にわたる沖縄振興で解消されなかった長年の課題を解決するための改正だ。

 ただ、法整備だけで問題が解消するわけではない。新たな産業創出のために設けられた「特区・地域制度」は参入企業の少なさが創設当初からの懸案だ。運用実績が特に低い「経済金融特区」は、新たな認定要件の対象となっていない。

 内閣府幹部は、「運用実績を上げることが優先課題」としており、企業誘致の困難さを印象づけた。給与増などの新たな要件が、企業にとっての参入障壁となってしまう懸念もある。

 こうした点について自民党内でも賛否があり、沖縄振興調査会の宮崎政久事務局長は「柔軟な対応が必要になる」と警戒感をにじませた。

 「北部振興」では「医療の確保」が努力義務の一つだ。公立沖縄北部医療センター(北部基幹病院)が、地域医療の拠点になることが期待されるが、開院時期の遅滞が続いている。

 新たに条文に加わった「子どもの貧困」対策では、若年妊産婦の割合の高さなど「沖縄固有の課題もある」(県選出自民党議員)として、県内事情を踏まえた施策を求める声も上がっている。

 いずれの改正も、実効性のある施策がないと「絵に描いた餅」になる。沖縄振興の前線に立つ県には、主体的に課題解決に取り組む姿勢が求められる。
 (安里洋輔)