ちむどんどん第88話では、暢子(黒島結菜)の思いが、青柳和彦(宮沢氷魚)の母・重子(鈴木保奈美)に通じ、結婚にかたくなに反対していた「しーちゃん」の心を解きほぐすことができました。房子(原田美枝子)の助力を得て、暢子がとった方法は、戦後の闇市の味を通じて、青柳家の親子3人幸せだったころの記憶を呼び覚ますというものでした。おからの寿司や、鯨肉を用いたコトレッタ・アッラ・ミラネーゼ(ミラノ風のカツレツ)など、とぼしい物資の中で人々が暮らした当時を思い出させる料理が並びました。
さて、沖縄産の「鯨肉」といえば、ヒートゥ(イルカ)の肉です。ヒートゥはゴンドウクジラやバンドウイルカなどの小型鯨類をさします。イルカがよく見られる名護湾では戦前から1970年代までヒートゥ漁が盛んで、3~5月頃、沖を回遊するイルカを浅瀬に追い込み、男たちが銛(もり)を手に格闘し、1日に100頭以上捕獲することもあったようです。イルカは食料不足の時代の貴重なタンパク源でした。
現在、伝統的なヒートゥ漁に近い「突きん棒漁業」は県の許可制になっています。県農林水産部水産課によると2022年現在、名護市の漁船6隻が許可を得ています。
ちなみに沖縄でも1950年ごろから、大型船での大型鯨類の捕鯨が盛んになり、クジラ処理工場まで建設されました。52年1月25日の琉球新報には「海の幸 捕鯨船の初の手柄」との見だしで、与那城村水産組合所属の船が国頭東方の海上でザトウクジラの捕獲に成功したことを報じています。
ザトウクジラの沖縄の捕獲量は57年ー58年期が290頭でした。しかし、度重なる乱獲により61年ー62年期には24頭、62年ー63年期はザトウクジラは0頭でマッコウクジラ1頭となるまで激減します。資源の枯渇と国際的な捕鯨禁止の声の高まりも重なり、大型船での捕鯨はなくなっていきました。