【記者解説】沖縄の最低賃金、なぜ国基準よりも大きい上昇に?背景にはあの価格の動き


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
沖縄地方最低賃金審議会の島袋秀勝会長(左)から答申を受け取る沖縄労働局の西川昌登局長=10日、那覇市内

 県内の最低賃金(最賃)を巡る審議会の議論は、現行の時給820円を33円引き上げて853円とすることで決着した。国の審議会が目安とした「30円」を上回る引き上げ幅となったのは、厚生労働省の賃金改定状況調査で示された賃金上昇率の2.4%に、直近の県内の物価上昇率1.6%を加えた「4%分=33円」の引き上げが労働者の生活に必要との判断に基づいている。

 審議会は労働者、使用者の代表5人ずつと、公正・中立の立場から公益を代表する5人の計15人の委員で構成される。

 最賃改定に向けた調査や具体的な議論を進める審議会の専門部会は7月21日以降、計6回開かれた。だが、長引くコロナ禍や原材料価格上昇で経営環境が厳しいことから引き上げに慎重な使用者側と、物価高騰の生活への影響などを踏まえて30円を超える上積みを訴える労働者側との溝は埋まらず、全会一致には至らなかった。

 10日の審議会で採決となり議長を除く出席委員13人のうち、国の目安に沿った850円案に賛成したのは4人で、いずれも使用者側委員(1人欠席)だった。一方、853円案には労働者と公益の委員計9人が賛成した。

 最賃引き上げは消費喚起などが期待される一方で、コロナ禍に円安、資源価格高騰のあおりを受ける経営側には負担となる。中小・零細規模が多い県内企業は、原材料費の上昇分を価格に十分転嫁できていない状況もある。最賃引き上げを経済の好循環につなげる上で、審議会が答申の付帯決議として指摘した、企業側が賃上げしやすい環境整備が不可欠になる。
 (當山幸都)