【詳報②】沖縄県知事選 現県政・岸田政権への評価、コロナ・物価高対策は? 立候補予定3氏座談会


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
(左から)玉城デニー氏 佐喜真淳氏 下地幹郎氏

 9月11日の沖縄県知事選投開票日が1カ月後に迫る中、琉球新報社が11日に開催した立候補予定者による座談会で、現職の玉城デニー氏(62)と、前宜野湾市長の佐喜真淳氏(58)、前衆院議員の下地幹郎氏(60)が一堂に会して初めて議論を交わした。2週間後に迎える選挙戦突入を前に、3氏とも白熱した舌戦を展開した。


県政、政権評価

佐喜真氏 県民を守る責任欠如
下地氏 国との関係を見直す
玉城氏 公約全て着手し推進

 

―県政の評価、岸田政権にどう向き合うか。

 佐喜真氏 昨年7月までに21回開催された新型コロナの専門家会議に、知事が出席したのは1回で、医師などからも不信感が出た。国任せで県民を守るというリーダーシップと責任が欠如している。沖縄振興予算も3千億円を割り込み、県民サービスの質、量は劣化した。残念なのは今年6月のゼレンスキー発言だ。私は政府との対話の姿勢を貫き通し、是々非々の姿勢で取り組む。

 

 下地氏 玉城県政は辺野古反対で止めることがワンイシュー政策で選ばれたが、埋め立てられた。コロナも人口比で世界ナンバーワンの感染者数だ。インフレ対策も県民税、水道料金、電気料金引き下げなど、国からのお金の工面だけでなく、県ができることをやったのか。岸田政権のインフレ対策も無策だ。私は国との関係を見直し、協議はしてもすり寄ったり、要請したりしない。

 

 玉城氏 4年間で291項目の公約は全て着手し、287項目は推進した。実行率は98・6%だ。公約以外もSDGsの推進、人権を尊重するための虹色宣言、子どもの権利尊重条例も実現した。岸田政権には辺野古問題で、県との率直な話し合いをするよう要請をしてきたが、応じていただいていない。県民の民意を尊重し、県との話し合いをしていただくよう、粘り強く働きかけたい。


沖縄の将来像

下地氏 個性を出し規制緩和
玉城氏 平和で豊かな島実現
佐喜真氏 挑戦できる環境整備

―今年日本復帰50年を迎えた沖縄の将来像は。

 下地氏 (沖縄振興計画の)2~5次は目標達成できず、所得も伸びていない。国主体ではもう無理だ。国との関係を見直し、沖縄の個性を出す。規制緩和やPFIを進める。もう一回、経済成長のど真ん中に沖縄の企業を入れる。電気を石炭火力からバイオ、水素発電に変える。相当な投資が経済効果を生む。北部までの鉄軌道も実行する。渋滞解消だけでなく、経済が動く。

 

 玉城氏 復帰50年に当たり新たな建議書を政府に出した。平和で生き生きと暮らせる誰一人取り残すことのない優しい社会の形成、世界とつながり時代を切り開く強くしなやかな自立型経済の構築などを打ち出した。こうした将来像実現のため政府には経済発展の阻害要因となる基地の整理縮小や日米地位協定の抜本的見直しをはじめ、真に平和で豊かな沖縄実現に一緒に取り組んでほしい。

 

 佐喜真氏 沖縄の地政学的な優位性を生かして基地の返還地を有効活用するため国と協議を重ね、10年、20年先を見据える。そのためには人材育成が必要だ。公約に掲げる子ども特区で、医療費、給食費、保育料を無償化し、その分を子どもへの投資に使えるようにする。子どもや若い人たちがチャレンジする環境をサポートできる体制を整えることが10年、20年先の沖縄にとって必要だ。
 


コロナ、物価高対策

佐喜真氏 接種率を全国並みに
下地氏 空港で全員にPCR
玉城氏 医療支援へ予算措置

―新型コロナ対策、物価高への対応は。

 佐喜真氏 市町村との連携を図り、ワクチン接種率を全国並みに高める。医療体制の充実強化や学校、保育所などの感染防止策を実行する。観光関連産業を中心とする1千億円規模の経済対策パッケージを組む。物価高対策は電気、ガス、ガソリン、食料品など生活必需品の高騰に苦しむ県民を全力で支援する。離島の不利性解消のため県独自の支援策も行う。中小企業の資金繰りや農林水産業への支援を行う。

 下地氏 コロナの悪化は国の政策も間違っていた。国、県両方が責任を取るべきだ。私は以前から、空港から入る全ての人へのPCR検査実施を訴えている。県民がどこでも24時間無料で全部検査ができる体制も徹底する。大規模な療養施設も準備する。医療機関への支援もやる。こういうことを行えば、飲食業やホテルに支援策を打つ前に観光客が来る。いざという時に使える病院の感染病棟を徹底して増やす。

 

 玉城氏 累計で6765億円の予算を組み、無料PCR検査、市町村をサポートする広域ワクチン接種センターの設置などにも取り組んだ。PCR検査は人口10万人当たり全国4位の受検率だ。雇用維持やおきなわ彩発見キャンペーン、事業者への支援、県本部から介護施設への医療チーム派遣も進めた。原油、物価高騰対策は漁業団体への燃料費補助、畜産農家への補助、経営悪化した酪農家への支援に取り組む。


出席者

 玉城デニー氏(62)(現職)
 佐喜真淳氏(58)(前宜野湾市長)
 下地幹郎氏(60)(前衆院議員)

 司会 島洋子(琉球新報編集局長)

 

【関連記事】

沖縄知事選、立候補予定の3氏が座談会で論戦 辺野古移設の是非、明確な争点に クロス討論で火花

【詳報①】沖縄県知事選 基地問題への対応、選挙の争点は? 立候補予定3氏座談会

【詳報③】沖縄県知事選 クロス討論で火花 それぞれがぶつけた質問とその回答は? 立候補予定3氏座談会