泊漁港における沖縄県漁業協同組合連合会の市場業務が、10月11日付で糸満漁港へ移転する。現在の泊魚市場は1980年の開設以来、県水産業の拠点として重要な役割を担ってきたが、施設の狭隘(きょうあい)性や老朽化、環境衛生面の改善が必要とされ、2000年頃から移転計画が持ち上がっていた。関係者の多くが「より衛生管理の行き届いた安全安心な鮮魚を消費者に届けられる」と歓迎する一方で、那覇地区漁業協同組合との競争激化や、消費地の那覇近郊から離れ輸送に不便だとして移転に慎重な意見も聞かれる。
泊魚市場では、県漁連と那覇地区漁協の2団体で構成する泊魚市場有限責任事業組合(LLP)が、県の認可を受けて合同で市場を運営していた。18年に県漁連側の競り機能の移転が決まったことを受け、LLPは21年3月末に解散。以降は荷さばき施設を二つに区切り、それぞれで競りを行ってきた。
泊魚市場の荷さばき施設は約3千平方メートルで、県漁連の施設はその約7割、那覇地区漁協は約3割を占める。県漁連は10月の移転後、23年3月末までに泊の施設を解体する方針だ。
一方、新市場の整備が必要との認識は一致しているものの、移転に反対し10月以降も泊魚市場に残る那覇地区漁協は、水揚げ量に対し同漁協の競り場面積では十分に対応できないと危惧している。泊で市場の再整備計画を進めるよう、県や那覇市に支援や補助の必要性を訴える。
県漁連市場課の上地栄樹課長は「新市場は衛生管理が徹底している。品質向上による競争力の強化を図りたい」と力を込める。泊魚市場の開設当初から、ほぼ毎日市場へ通う仲買人の宮里繁さんは「名残惜しい気持ちはあるが、食の安全が最優先だ」と前向きだ。
那覇市を拠点とする仲買人は「移動が不便になるだけでなく、那覇地区漁協との競争激化も心配だ」と吐露し、今後県漁連と那覇地区漁協それぞれの競りにどう参加していくか模索したいと述べた。
(当銘千絵)