島尻氏「カレンダー」問題 識者、ブログ削除に「証拠隠滅」


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島尻安伊子氏の2010年2月5日のブログ。「あい子カレンダー」のタイトルで、カレンダーについて書き込んでいる。現在は削除されている

 島尻安伊子沖縄担当相が選挙区内で自身の顔写真が入ったカレンダー付きの「ポスター」を配布していたとして、公選法に抵触する可能性があるとされる問題。島尻氏側からは「カレンダー」を室内用の「政治活動用ポスター」と言い換えることで問題の幕引きを図ろうとする意図が透けて見えるが、そもそも今回のケースは公選法違反となるのか。識者は「公選法違反に当たる」「違反とは言えないが問題はある」との見解を示す。

 公選法は「金銭、物品その他の財産上の利益の供与または交付」を寄付として定めており、選挙区での寄付は禁止している。2014年には松島みどり法相(当時)が選挙区内の祭り会場で「不特定多数」にうちわを配布したとして、閣僚辞任に追い込まれた。
 島尻氏は後援会員を中心とした支援者リストを基に「ポスター」を配布したと説明しており、自身のブログで配布を呼び掛けていた。後援会員へは会費の対価としての配布となり、問題にはならない。
 一方、選挙違反に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授(憲法学)は、ブログで呼び掛けた点に着目し「後援会員限定と分かる言葉がなければ不特定多数への配布に当たり、公選法違反だ」と指摘する。「配布する際に後援会員かをチェックしていたなら未遂なのだろうが、そうでなければ『広く取りに来てください』ということになる」と述べる。
 上脇教授は島尻氏が「カレンダー」を「ポスター」に言い換えたのは財産的価値が低い物品を配布したとして、寄付の対象から除外する意図があったのではないかと推測する。その上で、ブログから配布を呼び掛けた箇所を削除したことに「『ポスター』であれば削除する必要はない。違法だと認識したので、証拠隠滅を図ったのだろう」と指摘する。
 公選法に詳しい日本大学の岩井奉信教授(政治学)は「現段階で公選法違反とは言い切れない」と述べる。選挙の集票カードの記名者に「ポスター」を配布した可能性を島尻氏は否定しなかった点については「支援者リストに登録されている場合は、法的には『不特定』の要件から多少欠けるのではないか」と指摘する。ブログで呼び掛けたことについては「実際に配布されたかが問題だ」との見方を示す。
 一方で苦言も呈す。「ブログでの呼び掛けは『不特定多数』に配布したとの疑いも招く。後援会員以外への配布も、厳密に捉えれば寄付だろう。違反にならなくても望ましくない行為であることは間違いない」と強調した。