TPP県内影響、子牛価格の暴落懸念 輸入豚と差別化必要


社会
この記事を書いた人 志良堂 仁

 計40品目の農水産物について環太平洋連携協定(TPP)発効に伴う影響分析を公表した農林水産省は、牛肉や豚肉、乳製品の3品目について最も影響が出るとの見解を示した。畜産は県内農業産出額全体の6割超を占める産業として拡大基調を続ける中、子牛の繁殖農家や養豚農家など生産者への経営不安や担い手確保などへ影響は免れない。

 牛肉は現行38・5%の関税を段階的に減少、16年目以降は9%になる。安価な輸入肉の流入に連動し、国内の牛肉や豚肉価格の下落が想定される。農水省は「長期的には国産価格の下落も懸念される」との見方を示しつつ、輸入牛肉と品質面などで差別化された和牛や交雑種牛肉は「当面、輸入の急増は見込みがたい」と分析した。
 これに対し県畜産振興公社の波平克也理事長は「TPP発効1年目で11%関税が下がる。豪州などから急激に輸入量が増えることは間違いない」と指摘する。焼き肉チェーン店などで輸入牛取り扱いが増加し、国産牛や和牛の消費量が減少していくといった影響の広がりを指摘する。
 県内の肉用牛農家戸数(2014年末時点)は繁殖農家が2583戸と9割強を占め、ブランド和牛に育つ子牛を全国各地に供給する一大産地となっている。近年は全国的な子牛不足もあって引き合いが強まり、2010年ごろから高止まりを続ける取引価格は、直近では平均単価60万円という「異次元」(畜産関係者)の状態に突入している。しかし、TPPの打撃で全国の肥育農家の戸数が減少すれば、「子牛価格の暴落もあり得る」と警戒感がある。
 豚肉は高級部位の関税を10年目に撤廃、安い部位にかける1キロ482円の関税は10年目に50円になる。輸入豚肉と一般豚肉の肉質に大きな差はなく、今後競合にさらされるとみられる。波平理事長は「アグー豚などのブランド豚の人気は根強い。輸入豚肉との差別化に向けて、ブランド化への支援対策が求められる」と分析している。