里親委託解除、児相は実親の環境を考慮せず 調査委最終報告書「沖縄県の方針に従わないものは排除という対応」と批判


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎
沖縄県庁(資料写真)

 沖縄県那覇市の50代の夫妻が、生後2カ月から5年以上養育していた児童の里親委託を児童相談所から解除された問題を巡り、児相が実親側の環境を考慮せず児童を実親に戻そうとしていたことが30日、分かった。時期は明らかにされていないものの、実親が暮らす県外の自治体が受け入れを拒否したことも判明した。昨年1月に夫妻宅から一時保護された児童は、現在は県内の別の里親宅で暮らしている。 

▼里親委託解除後、児童は別の里親宅に 調査委が最終報告で指摘

 外部有識者による調査委員会が今年2月にまとめた最終的な報告書を、本紙が情報公開請求で入手した。報告書は全36ページで、一部が黒塗りになっている。調査委は2月、玉城デニー知事に報告書を提出した後、報道機関に11ページの概要版を発表していた。

 今回開示された報告書は、実親が児童を引き取るかどうかで気持ちが揺れていた様子も指摘する。児相が実親の気持ちの揺れに真摯(しんし)に向き合わず、当初の計画通りに里親委託解除を進めたとし、「県の方針に従わないものは排除するという一方的な事務的対応だ」と批判した。

 元里親側は児童の発達の特性や医師の助言を踏まえ、実親ではないと知らせる「真実告知」をしておらず、児童の発達に合わせ、時間をかけて伝えさせてほしいと訴えていた。一方、児相は告知するよう求めていた。

 報告書は、児相の嘱託弁護士が前面に出て、福祉的な対応は置き去りにされた状況を批判した。2021年8月の児相内部の会議では当時の嘱託弁護士が、元里親が方針に従わない場合、委託を解除して一時保護し、実親が住む県外へ移管するよう提案。児童の意向確認はされずに方針が決まる様子に「子どもの権利主体性の視点はないが、誰も嘱託弁護士の見解に意見を差し挟めない」とした。

 県青少年・子ども家庭課は、実親が暮らす自治体が受け入れを拒否していたことについて「子どもの将来に関わることであり、個別のケースの内容は伝えられない」と説明した。報告書を受け、次年度は第三者の評価を取り入れ、子どもの意見をくみ取る仕組みづくりに取り組むことも強調した。

【関連記事】

▼児童相談所の業務に第三者評価導入へ 沖縄県、里親の意見を聞く制度も検討

▼里親解除問題、調査委「組織防衛的」と指摘

▼児相の対応「福祉の放棄」 里親委託解除、中間報告でも指摘

▼調査委が中間報告で提言した改善策【一覧】

▼里親委託解除、玉城知事が謝罪「不安、不信を抱かせた」