知事冒頭発言全文・一問一答要旨


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 会見での翁長雄志知事の冒頭発言全文と一問一答の要旨は次の通り。
 本日、去る11月9日付で、地方自治法第245条の8第2項の規定により国土交通大臣が行った「辺野古新基地建設に係る公有水面埋め立て承認取り消し処分を取り消せ」との指示について、これに従わない旨の文書を、同大臣宛て発送することとした。

 私は知事に就任して以来、政府に対して「基地は沖縄に置いておけばいい」「辺野古が唯一の解決策である」といった固定観念を捨て去り、新基地建設に反対する多くの沖縄県民の声に耳を傾け、移設問題に向き合ってもらいたいと求めてきた。
 県としては、本件公有水面埋め立て承認については、本年7月の第三者委員会の検証結果報告書を受けてこれを精査した結果、取り消し得べき瑕疵(かし)があるものと認められたことから、取り消しを行った。
 是正の指示は、改正前の地方自治法でいう職務執行命令に相当するものであり、国が地方公共団体に行う関与の方法として最も厳しいものだ。承認取り消しに対する審査請求、審査請求手続きにおける執行停止決定および代執行手続きへの移行といった一連の政府の対応は、団体自治、住民自治といった地方自治の本旨に照らしても、極めて不当であり、今日の事態に至ったことは誠に残念だ。
 県の承認取り消しは適法であり、かつ正当だ。私は今後も、辺野古に新基地は造らせないという公約の実現に向け、全力で取り組む考えだ。
 県民の皆さまのご理解とご協力をお願い申し上げる。
    ◇   ◇
 ―裁判に向けて思うこと。裁判で何を訴えていくか。
 知事 是正指示の拒否については、第三者委の判断を受け、慎重に審査し、法律的な瑕疵があるという確信の中で県の正当な主張をしたいということだった。勧告にもその思いを伝えた。今回、指示が出たが、私どもの不動の価値観、正当性は変わっていないので指示は拒否することになった。訴えることはたくさんあるが、国の考えに一つずつ反論したい。基地の在り方や環境保全のずさんさ、沖縄県の置かれている位置。しっかり伝えることで多くの県民、国民の理解を得たい。
 ―裁判で知事が証言することはあるか。
 松永和宏弁護士 出頭できる期日であれば、意見陳述をお願いすることになるだろう。裁判が起きるとしたら、県としてはなぜ取り消したのかはきちんと訴えていかなければならない。
 ―安倍首相が代執行は適切な手段だと発言し、自らの正当性を主張した。
 知事 国の強権力というか、ここまで(やる)かというようなことをやりながら、今回、安倍総理が司法判断を仰ぐという発言をし、代執行をある意味で正当化しようとするのは、県民の声に耳を傾けていることにはならないと思う。こういった発信をすること自体が安倍政権の在り方、日本の民主主義の在り方について大きな疑問を感じたところだ。
 今回、私どもに回答を求めることに3日しか時間を取っていない。報道によれば、是正勧告と内容が同じなので、3日もあれば判断できると。沖縄への思いが見えてくるようで、総理がそう発言することそのものが、根底から在り方が問われるのではないか。
 ―県からの公開質問状について、国交相が「回答義務はない」と発言した。
 知事 多くの行政学者が、今回の行政不服審査法を含めて「おかしい」ということだ。県民と国民からすると理解しにくい。だから国でしっかり説明してもらいたい。それが県民への礼儀でもあるだろう。国民理解を広げれば前に進めると総理も言っている。そのためにとても分かりやすく説明する必要があるのではないか。
 ―安全保障の分野でも地方自治が重視されなくてはならないという立場か。
 知事 沖縄の基地問題はまさしく人権問題で、基本的人権を尊重するというものが、ある意味で一番大きな眼目だ。人権を守る地方自治、憲法でも国と地方が対等だという形で規定されている。安全保障を掲げ、その中で地方は黙っておれということになったら、国民の人権を無視する形になろう。地方自治を大切にするということは、国の在り方も地方の立場から意見を言う中で、日本のかじ取りを、多くの国民の声、県民の声に耳を傾け、前に進めていくというのが当たり前のことだ。何も言うなと、問答無用だという形で、安全保障の名前で、私たちを切り捨てようとするのは本当の意味での日本国の民主主義の在り方ではないと思う。
 ―法廷闘争に入る。歓迎すべきことと考えるか。
 知事 歓迎すべきものではないが、私どもは辺野古が唯一だとか、自ら差し出したことのない基地を新たに海上に造らせるのはとんでもない話だと思っていて、あってはならないことだ。国が物事を進めようとするときに、執行停止をし、審査請求の中で判断を仰ぐというようなこともやっている。代執行ということもそれに併せ、工事着手するのは、在り方としてはおかしな話だ。しかし、法律というのは厳然としてあるわけで、私どもも行政不服審査法よりは代執行の方が判断を仰ぐという意味ではいいのではないかと思ってはいる。歓迎するとかいう意味ではない。
 松永弁護士 代執行というのは非常に強権的。全く適正ではないと考えている。
 ―ボーリング調査に向け台船が大浦湾に入港した。辺野古の工事、国はどういう対応をすべきだと考えるか。
 知事 事前協議はもうないという発言をし、物事を進めようとしている。強権的なというか、そういったことをやりながら進めていることについて大変ある意味では憤りも覚えている。
 ―官房長官が久辺3区への直接補助金について、反対運動への迷惑料的な位置付けもあるなどと説明した。
 知事 国権の最高の場所で、こうした解釈がなされること自体がこの国の今の民主主義の危うさを示しているのではないか。置かれている立場の方々が、正当に多くの方々に訴えをしようとするようなものに対しても、そう解釈し問答無用という姿勢を打ち出すということ自体が大変憂慮される。米軍基地問題は沖縄が多く抱えている問題ではあるが、地方自治の在り方からしても表現の自由ということからしても、長官の発言はとても納得のいくようなものではない。お金を出すこと自体も分断だが、その理由付けが、基地を絶対造らせない県民と、地元にあって悩んでいる人たちとを、分断するような発言を堂々と国会で言うこと自体が、やっぱり僕は日本の政治の堕落ではないかなと、大変これは強く思う。
 ―5年以内の運用停止。県が工程表を作成する。
 知事 仲井真前知事が4項目を総理と官房長官に提示し、公約を破って埋め立て承認に至った大きな理由の一つだ。だから、この5年以内の運用停止は、大変重要なことだ。ここに至って中谷防衛大臣が新基地の受け入れが前提との認識を示したが、いつそのように決めたのか。全くはっきりしないままだ。こうして流れを見ると、埋め立て承認に至った4項目の一番重要な部分は、むしろ空手形で理解をしながら、項目に入れたのではないか。前知事が担保と言ったが、担保も一体全体何なのか、よく分からないような状況で、いま宙に舞っている。私ども沖縄県民の命運を決するような新辺野古基地のものであるから、このようなあやふやな、内容のはっきりしないようなもののなかで交渉することは大変残念だなと、無念な気持ちもある。
 ―この事態を「残念だ」と評価する背景は何か。
 知事 集中協議は結果的に歩み寄ることはなかったが、私たちはいろんな思いをそれこそ一生懸命ぶつけた。沖縄の置かれている環境、私たちなりの考え方、それに応えるものがなかった。権力を持っている人は、沈黙でもって通り過ぎることができる。私たちは言葉の限りを尽くして申し上げるが、いわゆる国家権力という、そういったようなもので、発言をしない中で通り過ぎていく。こういったものが強く感じられた。沖縄の歴史の話をしても分からないというような。国の安全保障を預かるトップの人たちがこういう発言をすること自体が、私たちからすると、沖縄県民の魂の飢餓感という言葉を使ったが、一つ一つの問題の解決には寄り添うという気持ちも含めて、あるべきものがあったはずだが、残念ながら地方自治という意味でも、県民一人一人の人権という意味でも全くそれに配慮なく、法律的な闘争に入っていくというようなことは、これは極めて誠に遺憾だ。
 ―意見陳述への決意を聞かせてほしい。
 知事 沖縄県の考え方、正当性、あるいは県民の気持ちを伝えるというつもりで、そして新辺野古基地阻止という意味ではありとあらゆる手段ということを申し上げている。弁護士から、知事が意見陳述をした方がいいとのことがあるのなら、私からすると、そういった場所が与えられたら、全力を挙げてやっていきたい。