94歳の刺繍、繊細 国頭村奥の宮城ナツさん 80歳からコツコツ、地元で初展示会「長生きして良かった」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
「なつばぁのてぃがま展」で展示された作品を前に家族と一緒に写る宮城ナツさん(前列右)=5月5日、国頭村奥の奥ヤンバルの里交流館

 【国頭】力強さと繊細さを兼ねそろえる刺繍作品が人々の心を揺さぶり、手仕事の豊かな世界へ誘っている。趣味で刺繍を続け、地域の人々から「なつばぁ」と呼ばれ親しまれている宮城ナツさん(94)。

 5月の大型連休期間中に奥ヤンバルの里交流館で初めて展示会を開催し、会場は多くの来場者で活気づいた。

 ナツさんは国頭村奥に住んでいる。奥区で生まれ育ち、5人の子宝にも恵まれた。13年前に夫が他界したが、高齢にもかかわらず炊事洗濯をこなし、現在も元気に一人暮らしを続けている。いつも笑顔で元気に畑仕事を続け、毎日欠かさないストレッチで、開脚前屈も難なくこなす話題のおばあちゃんだ。

宮城ナツさんの作品。説明文には「第1号の作品です」と記されている
宮城ナツさんの作品。バラの刺繍は自分へのプレゼント

 刺繍は80歳の頃から始め、趣味として畑仕事などの合間にコツコツと制作した。展示会は「なつばぁのてぃがま展~宮城ナツ94才の手仕事~」と銘打ち5月5、6の両日に開かれた。大型連休と重なり会場には多くの人々が訪れ、作品に見入り、在廊するナツさんに声を掛けて記念写真を撮った。

 今作品展は、普段から地域の先輩としてナツさんに親しみ、刺繍作品作りを見守り続けてきた玉那覇タカ子さん(81)と宮城直美さん(69)が企画した。2人はナツさんの意欲に感銘を受け「素晴らしい作品をぜひ多くの人に見てほしい」と願いを込めた。家族の協力を得て初めての展示会が実現した。

 ナツさんは「自分では展示会のことなど考えもしなかったが、区民の2人のおかげでこういう催しができてとてもうれしい。長生きして良かった。若い人たちにも頑張ってほしい」と笑顔で話した。

宮城ナツさんの作品。大好きな猫の刺繍
「最後だと思っていたけど時間のあい間に又はじめました」の文を添えて展示された作品

 作品は、20歳の時に糸から紡いだ芭蕉布の着物から、額に飾られた作品を含めた20点が展示された。

 完成まで約3カ月の日数を要した大作から、展示作品で一番好きという姫路城、大好きな猫を描いたもの、自分へのプレゼントで描いたバラなど、糸と布によって描かれる絵の世界は力強く、繊細だ。

 展示された作品以外にも、作品は数多くあり、子の元へ贈られたという。会場には、懐かしい夫との記念写真、集落伝統行事での姉妹写真、奥茶畑での三姉妹の写真なども展示され、来場者は静かに見入っていた。

 玉那覇さんは「地域の尊敬する先輩として、畑仕事や趣味の刺繍などいろいろなことに頑張っている姿に刺激を受けて私たちも頑張れる。素晴らしい作品を展示し、皆さんにコロナ禍で沈んだ気持ちを、作品を見て元気に変えてほしい。展示会開催への家族の協力に感謝したい」と話した。
 (新城高仁通信員)