国が知事提訴、辺野古代執行求める 来月2日に口頭弁論


この記事を書いた人 志良堂 仁

 米軍普天間飛行場の辺野古移設をめぐり、翁長雄志知事による埋め立て承認の取り消しは違法だとして、石井啓一国土交通相は17日午前、翁長知事を相手に代執行訴訟を福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎支部長)に提起した。米軍基地問題をめぐり県と国が法廷で争うのは1995年の代理署名訴訟以来、20年ぶりで2度目。また国と地方自治体の代執行訴訟は99年の地方自治法改正以来、初めて。県民の多数が新基地建設に反対する中、政府は既に知事の承認取り消しの効力を国交相が一時停止した上で、米軍キャンプ・シュワブ陸上部分で本体工事に着手している。それに続く法廷闘争入りで政府の強硬姿勢が一層鮮明となり、重大局面を迎えた。移設計画の見直しを求める沖縄側との溝が深まることは必至だ。

 代執行訴訟は高裁から始まり、最高裁まで2回審議される可能性がある。第1回口頭弁論は12月2日に開かれる予定。翁長知事は自ら出廷し、意見陳述する意向を示している。県側は行政法や環境などの専門家も証人としての出廷を裁判所に求め、承認取り消しは正当だと主張する構え。
 翁長知事が前知事の埋め立て承認には「瑕疵(かし)があった」として取り消したことについて、国側は高裁に提出した訴状で「瑕疵はない」と反論した。
 国交相は承認は(1)取り消しの利益と不利益を比較した場合に利益が上回り(2)公共の福祉に照らして著しく不当-な場合に限り、取り消し可能だと主張した。その上で承認取り消しで普天間飛行場の危険性除去、日米の信頼関係への亀裂、移設計画に投じた予算など「膨大な不利益」が生じると主張した。それに比べ、辺野古周辺の騒音被害や自然環境への悪影響には「十分な配慮」がなされているとし、「不利益は極めて小さい」と主張した。
 県側は普天間飛行場の県内移設で「沖縄の過重な基地負担が固定化される不利益」も指摘している。一方、国交相は訴状で「辺野古移設は負担軽減になり、不利益にならない」とした。
 県は承認取り消しの際に辺野古移設計画には「適正かつ合理的な根拠が乏しい」と指摘した。一方で訴状は、外交・防衛に関する事項は「国交相の所掌事務ではない」とし、国交相からの法定受託事務である埋め立て承認の判断要素にはならないと主張した。