比嘉さんの戦中体験、劇に 伊江小、13年ぶり上演


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手作りのイカダで本部の浜を目指し、泳いで海を渡る様子を演じる児童=11月28日、伊江小

 【伊江】伊江村立伊江幼稚園・小学校(山城祐市園長・校長)の2015年度学習発表会が11月28日、同校体育館で行われ、6年生15人は先の太平洋戦争を舞台に、劇「生命の糸」を上演し、戦後70年の節目に平和への思いを表現した。

 「生命の糸」は村東江上に住む比嘉正明さん(88)が記した「暗黒(くろ)い潮流―孫達へ伝える戦争体験記―」(2000年出版)を基に、地域の内間常喜さんが脚本を手掛けた。約13年ぶり2回目の上演。
 1943年、比嘉さんは産業兵士として神戸で仕事に就いていたが、翌年父の訃報を受けて帰村。当時17歳だった比嘉さんは義勇隊に所属し、伊江島での悲惨な沖縄戦を体験した。
 伊江島戦が終結した45年4月21日以降、村民のほとんどが慶良間諸島へ強制移送させられた中、生き残った隊員や比嘉さんらは壕生活を続け、島を脱出する計画でいかだを作るが、失敗の連続。6月初旬、比嘉さんは4度目で脱出に成功した。
 比嘉さん、戦友の上田さん(豊見城市出身)、負傷兵の3人は約6キロ先の本部の浜を目指し、暗黒の海を泳ぎ、命をつなげたという。
 25日に行われた児童鑑賞会(リハーサル)には比嘉さんと次男正矩さんが同校を訪れ、劇を鑑賞した。比嘉さんは「感動した。二度と戦争は起こしてはならない。これを伝えるのは生き残った者の使命」と強く訴えた。
 比嘉さん役を演じた6年生の平良勇樹君は「戦争は関係のない人の命を奪うものだということを劇を通して学んだ」と話した。(中川廣江通信員)

比嘉正明さん(前列中央)、脚本を手掛けた内間常喜さん(前列右)らと記念撮影をする6年生