TPP県内影響 交渉21分野 農業中心に「懸念」16件


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関係部局がTPPの県内への影響分析を報告した県TPP対策本部の第3回会議=18日、県庁

 県庁内の12部局・機関で構成する県TPP対策本部(本部長・翁長雄志知事)の第3回会議が18日、県庁で開かれ、TPP(環太平洋連携協定)の県内への影響の取りまとめ結果が報告された。交渉21分野ごとに関係部局がプラスとマイナスの影響を分析し、農業分野を中心に16件のマイナス影響が指摘された。一方、電子商取引の活発化や税関手続きの簡素化による県産品の輸出拡大の期待など、プラス影響として11件が挙がった。影響なしや不明が13件あった。

 交渉21分野について計38件の影響分析の報告があった。このうち農林水産部から最多の17件の報告があり、牛肉や豚肉が安い輸入肉に置き換わることや、海藻類の関税即時15%削減でモズク類や海ブドウなどの出荷量減少や価格の低下といったマイナス影響を指摘。パイナップルについても「現時点では大きな影響はないものと想定」としつつ、輸入の大半を占めるフィリピンがTPPに参加した場合の県産パイン価格への影響を懸念した。
 教育庁は学校給食の食材価格について「価格の変動が想定され、国産・県産食材の安定供給などの影響が懸念される」と指摘した。
 商工労働部からは12件の分析報告があり、TPPの目指す関税撤廃ルールについて「調達コストの減少が想定される」と「外国産の競合製品の流入が考えられる」の正負両面の影響を併記した。
 同部は貿易や商取引のプラス影響として、原産地証明書の発行時間の短縮や知的財産の権利保護、ビジネスマンの一時的入国手続きの迅速化などを列挙。また、TPP参加国間の電子商取引の規制緩和やルールの明確化により、沖縄の伝統工芸品など輸出拡大が難しかった少量生産品の海外販売の促進に期待するとともに、「少量多品種のスピード配送に適した那覇空港の国際物流ハブの利用促進とIT企業の集積促進も可能性がある」と副次的効果を指摘した。
 翁長知事は「前回までに比べ、方向性がはっきりしてきた。関係団体の声を聞きながら影響懸念分野に適切に対応し、不安を取り除いてほしい。米国議会の動きなど見えない部分もあり、引き続き情報収集をお願いする」と指示した。