親子3代で囲碁強豪 県内で指折り実力、石嶺さん家族


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 金城 潤
囲碁一家の石嶺家の真雄さん(中央)と知子さん(左)、昌子さん=浦添囲碁会館

 石嶺昌子さん(16)=那覇国際高校1年、浦添市=が碁盤に石を打つと、すかさず母・知子さん(46)が応じる。娘と孫の対局をそばで見詰めるのは祖父の真雄(しんゆう)さん(77)。祖父が前のめりになって「ここじゃない」と口を挟むと、3世代での囲碁論議が始まる。県囲碁連盟が「沖縄の囲碁界では有名だ」と話す石嶺家の一幕だ。

 石嶺家は県内でも指折りの実力を持つ家族だ。真雄さん(七段)は沖縄の頂点に何度も立ち、現在は県囲碁連盟の顧問を務めている。知子さん(六段)は女流本因坊戦の県代表の常連だ。孫の昌子さん(五段)は7月の全国高校囲碁選手権大会で6位に入った。知子さんは「家族での話題も囲碁が多く、囲碁の全国大会が家族旅行代わりになる」とほほ笑む。
 石嶺家の指導法は棋譜や定石などの基礎を暗記することだ。直感を生かすことにつながる。この考えは真雄さんが独学で力を付けたことが影響している。
 真雄さんは父の故・真篤さんについて「指導をするのが嫌いな人だった」と笑う。真雄さんは父の対局をそばでじっくり見て囲碁を学び、家にあった棋譜を暗記して力を付けた。
 真雄さん自身は教えるのが好きだ。浦添囲碁会館を1982年に開いた。知子さんと昌子さんも真雄さんから教わった。会社員時代は午後5時になるとすぐに帰宅して、家族との対局を楽しんだ。
 知子さんは小学3年のころに「自然に囲碁を始めた」と話す。現在、知子さんは浦添囲碁会館の2代目席亭となり、子ども向けの教室などを通して囲碁の普及に力を入れる。
 保育園のころには碁石を握っていたという昌子さんは囲碁の魅力を「勝つことの楽しさ」と言い切る。今後の目標に「全国大会で1度勝った人には負けないこと」と話す昌子さん。真雄さんが「優勝だ」と言い直すと照れ笑いした。
 家族で一番強いのは誰か。知子さんと昌子さんは「まだおじいちゃん」と言い、真雄さんも「僕が強い」と胸を張るが、家族で対局することは少ない。知子さんは「身内同士でやると、けんかになるからやらない方が平和でいい」と勝負師の一面をのぞかせた。
 昨年末のある日、昌子さんが碁石を片手に碁盤をじっと見詰めていると、真雄さんが「最近、昌子はじっくり考えるようになった」とつぶやいた。知子さんは「強くなったってことでしょ」と目を細める。これからも石嶺家の囲碁談義は続く。(安富智希)