知事年頭あいさつ(全文)


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子の貧困対策 力尽くす

 はいさい、ぐすーよー、いい正月でーびる。職員の皆さんには家族ともども輝かしい新春を迎え、ますます健勝のこととお喜び申し上げる。県知事就任から1年がたち、あらためて県民の熱い思いや県政を預かる重責に身の引き締まる思いだ。

 振り返ると、多くの時間を基地問題に費やした1年だった。その中でも経済問題や教育、福祉、保健医療などのさまざまな課題に並行して取り組むことができた。これもひとえに職員の皆さんが継続性を持って、県政を支えたことによるものであり、大変感謝申し上げたいと思う。
 米軍基地の問題は沖縄県の宿命的な課題だ。私は昨年1年間、県民との公約を守り、渾(こん)身の限りで普天間基地の県外移設、新辺野古基地を絶対に造らせないとの立場で全力を尽くしてきた。
 いわく、日本の安全保障は日本国民全体で考え、負担してもらいたい。0・6%の面積に73・8%の米軍基地はいくらなんでも理不尽だ。米軍基地は沖縄経済発展の最大の阻害要因である。米軍基地のこれまでの経緯、そして今日の現状はまさしく県民の自由、平等、人権、自己決定権への侵害であり、日本国の民主主義、地方自治の在り方を問うものだ。
 私たち責任世代がこのことに屈することなく、立ち向かっていく後ろ姿を子どもたちに見せることによって、子どもたちは子どもたちなりの判断をして自信と勇気と誇りを持って生きていくと信じる。それこそが長い目で見れば、沖縄の未来を切り開く力になるのだと思う。
 本年度は沖縄21世紀ビジョンで描いた五つの将来像実現に向けて策定した沖縄21世紀ビジョン基本計画の中間地点となる重要な年だ。これまでの成果を検証し、残された課題への対応などを総括し、後期5年に向けて沖縄振興を強力に推進していく。
 沖縄県経済の振興について、県が持つ自然、歴史、伝統、文化というソフトパワーが成長するアジアのダイナミズムをしっかり受け止め、日本経済のフロントランナーとして日本とアジアの懸け橋となるべく、私は昨年、中国や台湾、香港、シンガポールを訪問し、これら訪問国と本県との経済交流の重要性を訴えてきたところだ。
 昨年9月に公表された県アジア経済戦略構想実現に向けて、今後は推進計画の策定などにより、具体的な施策を実施し、本県の自立型経済の構築を加速させていきたいと思っている。
 ハワイとの交流についても、沖縄・ハワイ姉妹提携30周年記念式典へ参加するため、ハワイを訪問し、意見交換を行うことで、経済、文化、学術における相互交流の重要性をあらためて認識することができた。
 ことし開催される第6回世界のウチナーンチュ大会においては、世界に広がる移民の皆さんを中心とした40万人のウチナーンチュとの連帯感と今後の沖縄の将来の可能性にダイヤモンドのように輝く離島の力と相まって、沖縄のソフトパワーで未来を開いていくことが重要だ。
 沖縄経済のリーディング産業であり、継続的に持続的な発展をしている観光産業のあらゆる課題に対する取り組み、国際物流拠点の形成に不可欠な空港、港湾施設、国際IT拠点の形成に必要な海底ケーブルや航空関連産業クラスターの形成、新たな公共交通システムの導入、国際医療拠点の形成、大型MICE施設の整備、那覇空港第2滑走路の整備、沖縄科学技術大学院大学を核とした知的産業クラスターの整備など未来の沖縄を信じ、子や孫にしっかり引き継ぐべく、みんなで頑張っていきたいと思う。
 雇用情勢の着実な改善など経済が力強さを増していく中で、経済成長の果実が行き届いていない分野がある。全ての人が安心して豊かに暮らすことができる社会の実現に向けて、県民所得の向上や雇用の質の向上、子どもの貧困、待機児童への対応など、特に子どもの貧困への対応は性根を据えて力を尽くしていきたいと思っている。
 昨年は全国学力学習状況調査において、小学校は24位から20位へとさらに順位を上げて、中学校も課題の改善が進み、今後も全体的な学力向上の進展に向けて取り組んでいく。
 他にもたくさんの課題があるが、ピンチをチャンスに変えるような常に力強い、柔軟な発想でともに取り組んでいこうではないか。職員の皆さんには基地問題に翻弄(ほんろう)された1年であったにもかかわらず、冷静に各部局長を中心に県政を支えていただき、バランスの取れた県政運営ができたことを大変感謝している。
 県の施策を具体化していくためには、職員がその持てる力を全て使って、全庁的に取り組んでいく必要がある。職員の皆さんには、県庁が沖縄をリードしていくとの気概を持ち、県民のために何ができるかということを常に考えてもらいたいと思うし、各部各課の枠組みにとらわれず、県政の課題や問題点を共有し、積極的に議論するような意識と県風土の改革にも取り組んでもらいたいと思う。
 昨年1年間の職員の奮闘、努力に接し、間違いなく職員の皆さまが県民の先頭に立って頑張っていくものだと信じている。新たな1年も健康に留意され、各部局長を中心に県民全体の奉仕者として責務を全うし、幅広い視点で県民の期待に応えるようお願いする。
 本年が県民の皆さんにとって、県にとって、そして、職員の皆さんにとって、よい年になるようお祈りし、ご家族の皆さんの健勝と多幸を祈念申し上げ、年頭のあいさつとする。
 ゆたさるぐとぅうにげぇさーびら。いっぺーにふぇーでーびる。たんでぃがーたんでぃ。しかいとぅみぃふぁいゆ。