経済

係争委 県申し出却下理由 通知書(全文)

 【決定】
 審査申し出人 沖縄県知事 翁長雄志
 【主文】
 本件審査の申し出を却下する。

 【理由】
 第1 審査の申し出の趣旨および理由
 本件審査の申し出の趣旨および理由は別紙1「審査申出書」記載の通りである。
 第2 事案の概要
 1 審査申出入が平成27年10月13日付で沖縄防衛局長に対してした公有水面の埋め立ての承認の取り消し(平成27年10月13日付沖縄県達土第233号・沖縄県達農第3189号。以下「本件承認取り消し」という。)について、沖縄防衛局長が本件承認取り消しを取り消す裁決を求める審査請求(以下「本件審査請求」という。)をした上で平成27年10月13日付執行停止申立書により申し立てた執行停止の申し立てにより、国土交通大臣は、同月27日付で、本件審査請求に対する裁決があるまでの間、本件承認取り消しの効力を停止する旨の執行停止決定をした(国水政第45号。以下「本件執行停止決定」という。)。
 審査申出人は、本件執行停止決定が、地方自治法第250条の13第1項による審査の対象となる国の関与(以下、単に「国の関与」という。)に該当し、これに不服があるとして、地方自治法第250条の13第1項に基づき、審査の申し出をしたものである(審査申出人が同条第2項又は第3項に基づいて当委員会に審査の申し出をする趣旨でないことは審査申出書の記載上明らかである。)。
 2 本件審査の申し出の適法性について検討するため、当委員会は、審査申出人に対し、平成27年11月17日付文書(別紙2の通り)および同年12月8日付文書(別紙3の通り)により説明を求めたところ、審査申出人は、それぞれ平成27年11月24日付文書(別紙4の通り)および同年12月15日付文書(別紙5の通り)により回答し、また、当委員会は、国土交通大臣に対し、同年11月17日付文書(別紙6の通り)および同年12月8日付文書(別紙7の通り)により説明を求めたところ、国土交通大臣は、平成27年11月24日付文書(別紙8の通り)および同年12月15日付文書(別紙9の通り)により回答した。なお、国土交通大臣は、当委員会に対し、上記12月15日付文書の差し替えを求める同月18日付文書(別紙10の通り)を提出したが、これについては、上記文書の差し替えとしてではなく、参考資料として扱うこととした。
 第3 当委員会の判断
 当委員会は、本件審査の申し出は不適法であって却下すべきものと判断する。
 その理由は以下の通りである。
 1 一般に行政不服審査法に基づく執行停止決定が国地方係争処理委員会の審査の対象となるか否かについて
 (1) 地方自治法第245条第3号括弧書においては、「審査請求、異議申し立てその他の不服申し立てに対する裁決、決定その他の行為」が同条にいう「関与」から除外されており(以下、上記括弧書にいう「審査請求、異議申し立てその他の不服申し立て」を「審査請求等」という。)、国地方係争処理委員会の審査の対象となる国の関与には該当しないとされている。その主な趣旨は、国の関与に関する地方自治法の規定を、国の行政機関が地方公共団体に対し審査庁として関わる行為について適用することは、審査請求等によって救済を求める者を不安定な状態に置き、国民の権利利益の救済を図るという審査請求等の制度の目的を損なう恐れがあって適切でないという点にあるものと解される。
 そして、(1)審査請求等の手続中の処分である執行停止決定が国の関与に該当すると解するのは、審査請求等に対する終局的な応答の行為である裁決等が国の関与に該当しないこととの整合性を欠き、また、(2)審査請求等を受けた審査庁が終局的判断をするまでの間になす暫定的措置である執行停止決定をさらに関与に係る係争処理制度の対象とすることは、当事者を不安定な状態に置くこととなる。
 そうすると、「審査請求、異議申し立てその他の不服申し立てに対する裁決、決定その他の行為」を国地方係争処理委員会による審査の対象となる国の関与から除外する地方自治法第245条第3号括弧書は、審査請求等に対する裁決等の終局的な応答の行為に限らず、審査誇求等に基づいてされる執行停止決定をも除外する趣旨であると解される。
 したがって、一般に、行政不服審査法第34条に基づく執行停止決定は、地方自治法第245条第3号括弧書にいう「審査請求、異議申し立てその他の不服申し立てに対する裁決、決定その他の行為」に該当し、国地方係争処理委員会の審査の対象となる国の関与には該当しないと解するのが相当である。
 (2)ところで、国の機関、地方公共団体その他の公共団体等が、その「固有の資格」において、すなわち、一般私人が立ち得るのとは異なる立場において処分を受けた場合には、当該国の機関等は、当該処分について行政不服審査法による審査請求等をすることはできないものと解される。
 そして、本件においては、審査申出人が、沖縄防衛局長はその「固有の資格」において審査申出人による本件承認取り消しを受けており、審査請求をすることができないにもかかわらず、本件審査請求をしたものである旨主張した上で、本件執行停止決定が国地方係争処理委員会の審査の対象となる旨主張しているので、下記2において、この点について検討する。
 なお、審査申出人は、上記の主張のほかにも、本件執行停止決定が国地方係争処理委員会の審査の対象となると解すべき根拠について主張するところがあるが(別紙1、4および5)、上記(1)の通り、一般に、行政不服審査法第34条に基づく執行停止決定は、地方自治法第245条第3号括弧書にいう「審査請求、異議申し立てその他の不服申し立てに対する裁決、決定その他の行為」に該当し、国地方係争処理委員会の審査の対象となる国の関与には該当しないと解されることに照らし、いずれも採用できない。
 2 本件執行停止決定が国地方係争処理委員会の審査の対象となるか否かについて
 (1) まず、審査請求人が「固有の資格」において受けた処分についての審査請求手続きにおいて執行停止決定がされた場合に、当該執行停止決定が国地方係争処理委員会の審査の対象となる国の関与に該当するかについて検討する。
 ア 既に述べたとおり、一般に、行政不服審査法に基づく執行停止決定は、地方自治法第245条第3号括弧書の「審査請求、具議申し立てその他の不服申し立てに対する裁決、決定その他の行為」に該当するものと解され、違法な執行停止決定であっても、これに該当し、国地方係争処理委員会の審査の対象となる国の関与には該当しない。
 イ それに対し、ある者が「固有の資格」において処分を受けた場合には、上述のように、当該処分に対しては行政不服審査法による審査請求はできないものと解されるため、その者が審査請求をしたとしても、当該事案は、本来、行政不服審査制度の対象にならないものであり、また、行政不服審査制度が目的としている国民の権利利益の救済を考慮した地方自治法第245条第3号括弧書の趣旨は必ずしも妥当しないことからすると、当主主審査請求の手続における執行停止決定は、同号括弧書に該当しないとも考えられる。
 ウ 他方、ある処分に関する上記の「固有の資格」該当性の有無については、行政不服審査法の解釈上導かれるべき「固有の資格」の意義および「固有の資格」該当性の判断枠組みを踏まえつつ、直接には、当該処分に関する個別法の規定とその解釈によって判断すべきものである。
 そうすると、「固有の資格」において処分を受けたと解する余地のある者がした審査請求の場合であっても、当該個別法の規定に照らし「固有の資格」ではないとした審査庁(これは、内閣法第3条等により当該個別法に関する事務を分担管理する主任の大臣、又はその分担管理のもとに権限を行使する行政庁である。)の判断を国地方係争処理委員会が覆すことは、一般的には予定されていないと考えられる。
 エ ただし、国地方係争処理委員会は、国の関与又はそれについての不作為等に関する審査の申し出について審査を行い、違法な国の関与等があると認めるときは国の行政庁に対し必要な措置を講ずべきことを勧告するものとして置かれた機関であることからすると(地方自治法第250条の7、第250条の14)、上記のように「固有の資格」に該当せず審査請求が可能であるとした審査庁の当該判断が、一見明白に不合理である場合には、その限りではなく、当該判断が一見明白に不合理であるかどうかを国地方係争処理委員会が審理することは排除されていないと考えられる。
 したがって、一見明白に不合理な上記判断に依拠してなされた執行停止決定は、国地方係争処理委員会の審査の対象となる国の関与に該当すると解するのが相当である。
 (2) そこで、次に、本件執行停止決定に関し、沖縄防衛局長が「固有の資格」において本件承認、取り消しを受けるのではなく、一般私人と同様の立場において処分の相手方とされているものであるとした国土交通大臣の判断が一見明白に不合理であるかどうかについて検討する。
 ア この点に関し、国土交通大臣は、要旨、以下の通り、主張している(別紙8および9)。
 (1) 「固有の資格」とは一般私人と同様の立場で行政処分を受けたのではない場合、すなわち、行政機関相互間など行政を運営する側の内部的関係において行政処分が行われた場合や、行政主体間のルールとしての基本的な原則や手続準則が妥当する場面を示す用語であると解するのが相当であり、それが具体的にどのような場合を指すかといえば、典型的には、処分の名宛人が国の機関等に限られている場合(ただし、国の機関等が名宛人となる処分に設けられた特例が、一般私人が名宛人となる処分の単なる用語変吏にすぎない場合を除く。)や、処分の名宛人に係る事務・事業について国の機関等が自らの責務として処理すべきこととされ、または原則的な担い手として予定されている場合がこれに該当すると考えられる。「固有の資格」に当たるか否かについては、これらの基準に照らし、さらに、最終的には個別の根拠法令の趣旨から、上記のように行政を運営する側の内部的関係において処分がされた場合や行政主体間のルールとしての基本的原則や手続準則が妥当する場面に当たるか否かによって判断すべきものと解される。
 (2) 公有水面埋立法における「承認」は国に対して埋め立て事業をし得る地位を与えるものであり、埋め立て事業をし得る地位を与える点において、一般私人に対する「免許」と変わりがなく、また、国の承認基準は一般私人の免許申請に対する免許基準と同一である(同法第4条第1項、第42条第3項)とともに、同一区域の埋立免許や承認の申請が競願した場合にも国が一般私人に優先される仕組みとはなっておらず(同法施行令第3条第1項および第2項が国の承認申請についても準用される(同法施行令第30条)。)、承認に係る埋め立て事業について、国が自らの責務として処理すべきこととされているとはいえず、原則的な担い手として予定されているともいえない。
 また、承認の名宛人は国に限られているものの、国に対する承認も一般私人または地方公共団体に対する免許も同じ基準に基づいて埋め立て事業をし得る地位を与える点では同一であり、承認は一般私人に対する免許を単に用語変更したものであり、処分の名宛人が国の機関等に限られているとはいえない。
 これらを踏まえると、公有水面埋立法の解釈に照らし、国は、一般私人と同様の立場で承認を受けるものといえ、「固有の資格」において受けるものとはいえない。
 (3) 公有水面埋立法は、国が公有水面を直接排他的に支配し管理する権能を有しており、公有水面を埋め立てる権能を有していることに着目し、固に対しては「承認」、一般私人又は地方公共団体に対しては「免許」と文言を区別しているが、国が一般私人又は地方公共団体と異なり公有水面について直接排他的に管理する権能を有していることは、行政を運営する側の内部的関係においてされた処分かどうかや、行政主体間のルールとしての基本的な原則や手続準則が妥当する場面か否かに影響を及ぼすものではなく、「固有の資格」の有無に影響を与えるものではない。
 また、国に対する「承認」については、国についてはあえて法により規縛する必要がないとか、国が公有水面を埋め立てる権能を有しているなどの理由により、一般私人又は地方公共団体に対する「免許」に関する条文の一部が適用・準用されていないが、これにより、国が、都道府県知事との関係で行政機関相互間など行政を運営する側の内部的関係に立つものとはいえず、行政主体聞のノレールとしての基本的な原則や手続準則が妥当するものでもないことから、国は「固有の資格」において埋め立て承認を受けるものとはいえない。
 イ そこで検討すると、公有水面が国の所有に属しており、国は公有水面の埋め立て権能を含む包括的な管理支配権を有しているため、国以外の者に対する「免許」と国に対する「承認」とが区別され、国に対する埋め立て承認には、国以外の者に対する免許に関する条文の一部が適用・準用されていないとも考えられる。そのため、国が一般私人の立ち得ない立場において埋め立て承認を受けるものであると解することができるのではないかとも考えられ、上記ア(3)の国土交通大臣の見解の当否については疑問も生じるところである。
 しかし、国が「固有の資格」において埋め立て承認を受けるものではないとの結論自体に関しては、確立した判例又は行政解釈に明らかに反しているといった事情は認められないし、国土交通大臣の上記アの主張は、国が一般私人と同様の立場で処分を受けるものであることについての一応の説明となっているということができることからすると、国土交通大臣の判断が一見明白に不合理であるとまでいうことはできない。
 (3) したがって、本件執行停止決定は、国地方係争処理委員会の審査の対象となる国の関与に該当するということはできない。
 3 以上のとおり、本件審査の申し出に係る本件執行停止決定は、地方自治法第250条の13第1項に規定する審査の対象に該当するとは認められない。
 第4 結論
 よって、本件審査の申し出は不適法なものとしてこれを却下することとし、主文の通り決定する。
 国地方係争処理委員会
  委員長 小早川光郎
  委員長代理 高橋寿一
  委員 牛尾陽子
  委員 牧原出
  委員 渡井理佳子



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