県、自然「再生」も重点  慶佐次川でモデル事業


この記事を書いた人 志良堂 仁
シーカヤック体験などが盛んな現在の慶佐次川=6日午後、東村慶佐次

 県環境部は来年度から、従来の環境政策の自然の「保全」と「利用」に加え、失われた自然を積極的に「再生」するとの視点に立った環境行政に取り組む。「沖縄21世紀ビジョン」が掲げる将来像実現に向け、開発などで劣化した自然を取り戻し、次世代への継承と地域振興を図る。モデル事業として東村の慶佐次川で、赤土流出の防止対策や緑化などで自然の再生に取り組む。実施計画を来年度にまとめ、再生事業に取り掛かる。さらに同事業を担当する「環境再生課」を4月に新設する。また環境部は同ビジョンがうたう「聖域(サンクチュアリ)」指定など自然環境保全に向け、「生物多様性おきなわ戦略」で示される「県希少野生動植物保護条例(仮称)」制定を目指す。

 沖縄は温暖な気候で大小さまざまな島からなり、生物多様性の環境が育まれてきたが、開発などで自然が失われつつある。
 沖縄21世紀ビジョンでは目指すべき将来像に「沖縄らしい自然と歴史、伝統、文化を大切にする島」が掲げられ、環境部は理念に沿って再生事業を実施するため「県自然環境再生指針」を昨年3月に策定した。指針では劣化した自然を回復・復元させて元に戻すだけでなく、現状より豊かな自然環境へと修復したり、ビオトープなど自然を人為的に創造したりすることで林業やエコツアーなどに利用することを目指す。
 モデル事業の慶佐次川はかつて“港原(みなとばる)”と呼ばれる田園風景が広がっていたが、1963年の大干ばつで畑へと変わった。農地開発も進んで赤土の流出などにより、河口は土砂が堆積した。外来種の侵入や定着も確認されている。
 一方で慶佐次川は72年に「慶佐次湾のヒルギ林」として国の天然記念物に指定され、エコツアーに利用されるなど東村の貴重な観光資源になっている。自然環境の劣化が進むとエコツアーにも支障を来すことなどから、環境再生に取り組むことになった。
 モデル事業では(1)赤土や汚水の流出防止(2)外来のモクマオウやコイなどの駆除(3)川沿いの植栽-などを進める。事業の成果を踏まえ、県内の他地域にも応用していく。
 生物多様性おきなわ戦略では県内の希少種を保護するため「県希少野生動植物保護条例(仮称)」を制定すると記されている。(金良孝矢)