危機の民俗文化調査へ 狩俣琉大教授らレッドリスト作成


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 県内各地で受け継がれてきた伝統芸能や文化が、社会的・経済的要因で消滅の危機にひんしている現状を受け、琉球大学の狩俣繁久教授(方言学)らが統一基準で現状を把握し、消滅の危機度を測る評価指標となる「民俗文化レッドデータリスト」の作成に乗り出したことが30日までに、分かった。県内の民俗文化の保全、継承と再活性化につなげたい考えだ。

 民俗文化レッドデータリストは生物保全の基礎資料の生物レッドデータリストを参考にした。これまで地域や分野ごとに研究されてきたが、統一的な方法で琉球列島全体を対象にした調査はなかった。狩俣教授によれば、民俗文化のレッドデータリスト化は世界でも類がなく、初めての調査だという。
 琉球列島では豊かな自然環境や長い歴史を背景に多様な文化が育まれてきた。琉球舞踊や三線、エイサーなど活況を呈するものがある一方、久高島のイザイホーや宮古島のウヤガンなどの祭祀(さいし)のように、近代化や過疎化を背景に継承者が途絶えがちになり消滅の危機にあるものも少なくない。
 琉大では保全生物学や芸能論、民俗学、民族音楽の研究者が連携して調査に取り組む。民俗文化の保全、継承と再活性化の方策を検討する際の基礎情報として活用できるようにする。
 狩俣教授は「伝統芸能や祭祀が失われていく危機感もあるが、それだけでなくこれらの実態がそもそも分かっていない。できるだけ早く完成させたい」と意気込んだ。
 国内の無形文化財の保護に携わる文化庁伝統文化課は「伝統芸能、祭祀の現状を把握するのはやらなければならないことだが、なかなか簡単なことではない。とても意義のある取り組みだ」と期待を寄せた。
 狩俣教授や経済学者らは、31日午後1時から那覇市の県立博物館・美術館で開くイベントで、レッドデータリストや文化政策と経済効果について話し合う。(安富智希、知念征尚)