勤務制限、支援阻む 子の貧困対策で活動のSSW


この記事を書いた人 Avatar photo 大城 誠二

 学校を拠点に行政機関や地域、医療機関と連携し、子どもの貧困問題や不登校などの解決に取り組むスクールソーシャルワーカー(SSW)は、政府が昨年8月に閣議決定した「子どもの貧困対策に関する大綱」で教育支援の柱の一つに位置付けられる。県内には約50人が配置され、学校長の依頼を受けて問題解決に尽力している。一方、勤務日数や勤務時間に上限が設けられているほか、報酬の低さによる人材不足の問題点も指摘されている。

 心のケアが中心のスクールカウンセラーと違い、SSWは学校を拠点にしながらも、外部の行政機関とも連携を取り問題の解決に当たる。学校では生徒指導委員会に出席したり、担任教員から聞き取りをしたりして子どもの状況を把握し、支援策を考える。場合によっては家庭訪問で親が抱える問題にも寄り添い、学校と関係機関を行き来し行政的な支援につなげている。
 県内で活動するSSWの女性は、ひとり親家庭の子どもを担当し、支援につなげた。親は保育園に預けられない下の子の面倒を見るため仕事ができなかった。夏場に電気が止められ、子どもはあせもで皮膚がただれるほどで、給食が唯一の食事とみられていた。そのため、給食がなくなる夏休み前に急いで支援策を練った。
 親には当初、生活保護を勧めたが、就職に必要な車を手放すことに同意せず、頓挫。今度は児童相談所の一時保護所に子どもを預け、仕事を探すことを提案し、受け入れられたという。その間、フードバンクにつなぐなど、当面の食料確保も支援した。
 文字が十分に書けず児童扶養手当の更新ができていなかった家庭では、親に付き添って役所に行き、申請手続きを手伝った。
 一方、県教育庁が採用するSSWの場合、月の勤務日数は16日、1日の勤務時間は6時間までと定められている。女性は「支援には子どもの信頼を得ることが大事だが、出られる日が限られているので、次に会う約束ができない」と、制限があるために活動に支障が出ている悩みを明かした。
 現在の対象が小中学校に限られていることについては「高校は特別支援学級がないなど対策が手薄だ。幼稚園や保育園でも必要性がある」とし拡充も求めた。
 SSWの報酬は現在、日給9300円。スクールソーシャルワーカー研究会おきなわなどは、働く環境が十分でないとして、社会福祉士や精神保健福祉士など有資格者の報酬引き上げや、勤務日数の上限引き上げなどを求め、県教育委員会に要望書を出している。
 (稲福政俊)