2・28事件、台湾政府に賠償命令 県人犠牲認め、外国人に初


社会
この記事を書いた人 志良堂 仁

 台湾の国民党政権が住民多数を殺害した1947年の「2・28事件」で日本人漁師だった父を失ったとして、浦添市の青山恵昭さん(72)が台湾政府に損害賠償を求めた訴訟の判決が17日、台北高等行政法院(裁判所)であった。同裁判所は、青山さんの父、恵先(えさき)さん=当時(38)=が2・28事件で犠牲になった可能性が高いと認め、台湾政府側に600万台湾元(約2千万円)の支払いを命じた。政府側は上訴するか検討中だが、支払いが決まれば外国人が2・28事件で補償を受ける初の事例となる。

 青山さんは判決後、台北市内で記者会見し「画期的な判決だ。父の無念がやっと晴れた」と話した。
 判決は恵先さんのほか、「台湾2・28事件、真実を求める沖縄の会」(青山恵昭代表世話人)の調査で判明した県出身犠牲者の仲嵩実さん、石底加禰さん、大長元忠さんの男性3人の氏名も同列に記載した。同会顧問の又吉盛清沖縄大学客員教授によると、同会は他の3人についても賠償申請の準備をする方針。
 青山さんは2013年に台湾政府の委託を受けた基金会に賠償を申請。政府は昨年、慰安婦ら戦争中の台湾人への賠償請求に日本政府が応じていないことなどを理由に青山さんの請求を却下していた。判決は、恵先さんを事件の失踪者と認めた以上、政府は賠償に応じるべきだとした。
 行政院が事件被害者救済のために設けた財団法人「228事件紀念基金会」は調査の結果、恵先さんを事件の被害者と認定。だが賠償を管轄する内政部は、元日本兵の台湾人や台湾人元慰安婦に対する日本政府の補償が不十分だとして「対等の原則に基づくべきだ」と賠償を拒否した。
 青山さんは15年9月、基金会を相手取り提訴。判決は事件の賠償を定めた特別条例「228事件処理および賠償にかかる条例」に対等原則は適用されないと指摘した上で「外国人への支払いを認めない条文はない」として台湾人被害者と同等の規定額の支払いを命じた。事件は国民党独裁政権下でタブー視されてきたが、政府は民主化に伴い、解明や賠償を進めている。
英文へ→SIn court ruling, Okinawan first foreign victim acknowledged in Taiwan’s February 28 Incident