カイコからワクチン量産 インフルと日本脳炎 生物資源研が開発


この記事を書いた人 志良堂 仁
根路銘 国昭氏

 【名護】生物資源研究所(名護市)の根路銘国昭所長を中心に進める県の創薬研究事業で、新型インフルエンザH7型と日本脳炎のワクチン2種類について、カイコを使った量産体制の開発に世界で初めて成功した。2014年に世界で初めて同研究所などがインフルエンザH5型で開発した技術を応用した。複数回の実験で抗体反応が確認された。インドネシアで2年後のワクチン実用化を目指す。

 17日に那覇市のパシフィックホテル沖縄であったシンポジウム「21世紀のシルクロードは沖縄から」で根路銘氏らが発表した。根路銘氏は「世界的な成果だ。沖縄が創薬研究で世界拠点の一つを担っていけるようになる」と語った。
 インフルエンザワクチン製造に必要なHA(ヘモアグロチニン)タンパクを、カイコを介在させて人工ウイルスで大量生産する。カイコの技術では、従来の鶏卵を使うものよりも50倍ほどのワクチン生産力があり、低コストで短時間での大量生産ができる。根路銘氏によると、鶏卵のワクチンは1人分の生産コストが約千円だが、カイコだと7・6円で生産できた。
 インフルエンザH7型のワクチンは、飲み薬となる経口用ワクチンとしての運用も可能となる成果が世界で初めて出た。根路銘氏は「飲み薬のワクチンは米国をはじめ、多くが諦めていた分野だ。世界の流れを変えることができる可能性もある」とし、さらなる研究に期待している。
 創薬研究は県の「沖縄感染症研究拠点形成促進事業」の一環。このほかにもデング熱やジカ熱のワクチン開発にも着手していく計画だ。
 これまでインフルエンザH5型ワクチン製造については同技術の成果が確認され、製薬許認可に向けインドネシアで安全性や有効性の試験が実施されているが、今回はH7型と日本脳炎への対応でも効果があることが実証できた。