「夢だった3年間」 福祉タレントの春風さん、きょう泊高卒業


この記事を書いた人 Avatar photo 金城 潤

 福祉施設や病院で腹話術や手品を披露している福祉タレントの春風トシロー(本名伊波利夫)さん(76)が1日、泊高校夜間部を卒業する。戦争で失った青春を取り戻し、夢だったという高校生活を終える伊波さんは「周りの人が支えてくれた」と在学3年間を振り返る。卒業後は放送大学に入学する予定で「コミュニケーションについて学び、芸に幅を付けたい」と向学心を燃やしている。

「夢だった3年間」を過ごした泊高校の正門に立つ伊波利夫さん=29日、那覇市の同校

 伊波さんは沖縄戦で父を亡くし、戦後の食糧難で妹を亡くした。裕福だった一家は大黒柱を失って貧しくなった。中学卒業後は家庭を支えるために米軍基地で皿洗いとして働いたが、高校生活に「ずっと憧れがあった」という。
 制服の高校生を見るたびに心の穴を意識する人生だったが、泊高入学が決まり「天にも昇る気持ちだった」と振り返る。自宅の南城市からバスを乗り換え毎日1時間半かけて登校した。「学ぶ楽しみを知った」と通常4年間で取る単位を3年で全て履修した。
 孫のような同級生に「伊波君」と呼ばれた。思わず聞き返すと「だってクラスメートでしょ」と言われたことがうれしかった。
 「夢だった3年間」は終わるが、次に待つのは大学生活。「得た知識を社会に還元したい」と目を輝かせている。(安富智希)