経済

「はいたいコラム」 近江商人はいつもごきげん笑顔

 島んちゅのみなさん、はいたい~!滋賀県東近江市で仕事があったついでに、どうしても立ち寄りたいところがありました。「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」の経営哲学で知られる近江商人の屋敷とその町並みです。商い(企業活動)をすることが、取引の当事者だけでなく、世間(社会)もよくしていくものでなければならないとするこの考え方は、日本版CSR(企業の社会的責任や社会対応力)とも言われますね。

 世間様に喜ばれる企業理念で財を成した近江商人の屋敷を巡る中で、三方よしの原典となったとされる江戸時代中期の麻布商人・中村治兵衛が残した家訓を見つけました。
 「他国(土地)で行商するも、我がことのみと思わず、その地の人にもよきよう、私利を貪ることなかれ」。近江商人は行商の後、ゆくゆくはその地で店を開くことを目的としていたため、短期の利益より長期の信頼が何より大切だったのです。今で言うサスティナビリティ(持続可能性)を江戸時代から実践していたのですね。
 260年間伝え継がれることとなったこの中村家家訓は、実はぜんぶで11項目あります。わたしが感動的に気になったのは、こちら。
 「家を我が子に譲るまではわずかに三十年なり。その間は謹んで奉公の身と思うべし」。家督を継ぐ次期社長に奉公だと説いているのですよ。家や会社はあくまで授かり物であって、今は社長であってもたまたま期間限定で預からせていただいているに過ぎないと心得ていれば、確かに世間にも社員にも喜ばれるに違いありません。謙虚な社長って感じいいですしね。
 それからさらにグッときた言葉がありました。「家に出入りする人は必ず慇懃に待遇すべし」「粗略の言語を発すべからず。粗略の言語は禍いを招くもとなり」「心を常に快くすべし」です。
 わたしは感動しました。近江商人と三方よしはビジネスの合い言葉のように扱われますが、「相手を選ばず、常にぞんざいではないやさしい話し方で、いつも心が気持ちのよい人」がいたなら、何より友達になりた~いとは思いませんか。
 世間様に愛されるには、まず自分がいつも上機嫌でいること。さあこれなら今すぐはじめられます(よね)。ごきげん笑顔で毎度あり~!はいた~い!
 (フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)
(第1、3日曜掲載)
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 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。