『笑顔で花を咲かせましょう』 オバァたちの黄金言葉


社会
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『笑顔で花を咲かせましょう』KBG84著 幻冬舎・1100円+税

 KBG84。小浜島ばあちゃん合唱団・平均年齢84歳。天国に一番近いアイドル。80歳未満は研究生、80歳を超えるとウエディングドレスを着て、正式メンバーになれる。東京公演を行い、メジャーデビューもして全国的にも有名になった。これはまさに彼女たちの苦難に満ちた成功物語である、という本ではない。八重山の小島に住み、普通だけどパワフルなオバァたちの黄金言葉(くがにくとぅば)が紡がれた本である。

 92歳のオバァは、夫を亡くし、長男と次男も亡くし、毎日、泣いて暮らしていた。誰が慰めても涙が止まらない。友だちは離れていった。KBGに参加して、泣き顔が笑顔に変わった。今はセンターで歌って踊る。笑顔になると、友だちが戻ってきた。今は、いつ誰が来ても家に上げられるように、毎日草取りをする。ただし、一人の時、男は家に上げない。だって、オバァだって女ですもの。
 KBGの会長であったオバァは、最初は未亡人たちの集まりだったと語る。皆を楽しくさせるために、コイバナ(初恋の話)をした。コイバナが楽しくてオバァたちが集まってきた。皆が集まると、歌を歌い、合わせて踊るようになった。小浜島ばあちゃん合唱団の誕生だ。
 レコード会社からのメジャーデビューの時に名前をKBG84に変えた。レコードの吹き込みも全国公演も、楽しいから怖くない。小さな島の生活も自分の自由にしているから不自由はない。会長職が忙しいのも自分の意思でやっているから、それは自由。
 オバァたちが、神行事のこと、織物のこと、島の生活のこと、夫の自慢、健康の秘訣(ひけつ)などを語る。戦争を体験し、生活苦を乗り越えてきたオバァたちの黄金言葉が満載だ。私は、人生のマニュアル書的なものは好まないが、オバァたちの正直な言葉には圧倒された。最後に、オバァたちの良き息子であり良き彼氏である、つちだきくおさんの言葉。「諦めました。とことんお相手します。どんどん好き勝手してください。耐えていきます。天国のヒデばあちゃんたちも、笑いながら眺めているはずよ」
(中江裕司・映画監督)
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 ケー・ビー・ジー・エイティフォー 小浜島・ばあちゃん・合唱団・平均年齢84歳の略。「史上最高齢のダンス&ヴォーカルユニット」とPRし、活躍中。団員32人、研究生10人の計42人。