被災地で沖縄野菜販売 岩手・大槌のJA、産地交流に意欲


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岩手県大槌町で豊見城産トマトを販売する佐藤祐子さん =2月、岩手県大槌町

 東日本大震災で被害を受けた岩手県大槌町が再生への取り組みを進めている。震災後にプレハブから始まった産地直売所は、JAいわて花巻が運営する「母ちゃんハウスだぁすこ沿岸店」となり、沖縄県産のトマトやインゲンなどを取り扱うまでになった。だぁすこ沿岸店で働く佐藤祐子さん(60)は「早く根ができればいい。沖縄の人にもこの場所のことを知ってほしい」と被災地への来訪を呼び掛けている。

 佐藤さんは真っ赤な豊見城産トマトを手に「これはみんなからおいしいって評判なんですよ。よく売れてます」と笑う。
 かさ上げ工事の続く一帯に、だぁすこ沿岸店はある。5年前、地域一帯は大津波でのまれ、農地もほとんど海水に漬かった。野菜を販売する場所がなくなったため、数人の農家が集まり小さなプレハブを建てて産地直売所として運営してきた。ことし1月、被災地の営農支援拠点として町が建物を新設し、オープンしたばかりだ。
 大槌町では813人が亡くなり、420人が行方不明となった(2月現在)。仕事がないため、お年寄りが多く残っている。町を出て行った若い人が戻ってこない。佐藤さんは、地元の将来に不安を感じることもあるという。だが一歩一歩前に進んでいくと決めた。 流通も戻り、沖縄産野菜を販売できる場所にまでなったことは「うれしい」と笑う。トマトは、豊見城市のJAおきなわ食菜館「菜々色畑」から入荷している。トマトの他にも、JAファーマーズいとまん「うまんちゅ市場」から取り寄せたインゲンやピーマンも店頭に並ぶ。うまんちゅ市場の担当者は「産地間が連携することで、農家の所得向上につながる」と話している。今後も野菜を通じた沖縄と岩手県の交流は増やしていく考えだ。
(阪口彩子)