青木氏に思いはせ 差別、平和 足跡に学ぶ 沖縄愛楽園創設者命日


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かつての「病友たちの漁港」を訪れる参加者ら=6日午前、本部町備瀬の海岸

 【名護】名護市にある国立療養所・沖縄愛楽園自治会はハンセン病の歴史や現状を広く学び差別や平和について考えてもらおうと6日、フィールドワークと同園創設者の青木恵哉さんをテーマにしたシンポジウムを行った。青木さんは日本でハンセン病療養所を造った唯一のハンセン病患者。同日は青木さんの命日で、時折雨の降る中、青木さんの足跡を巡る本部半島のフィールドワークには約40人が、午後のシンポジウムには約80人が参加し、熱心に聞き入った。

 「雨でよかった。決して晴れだけではない時を過ごした人たちの現場に立てたことは、大きな経験だ」と話す参加者もいたフィールドワーク。備瀬や屋部などの地で、同園交流会館学芸員の辻央さんが過去の写真などと照らし合わせて当時の様子を説明した。

シンポジウムの感想を語る参加者ら=6日午後、名護市の沖縄愛楽園交流会館

 シンポジウムは一つの光の当て方をされてきた青木さんを、同園に来る前の香川県大島における青木さんや彼を慕い支えた大城平永さんの存在、創立期の同園で人々が求めたことなどを通して、青木さんの人間としての部分も含め多角的に見ようと開催した。
 報告者は滋賀大学教員の阿部安成さんや一橋大学教員の石居人也さん、同園ボランティアガイドの小松瑠美子さん、同園交流会館研究員の鈴木陽子さん、辻さんの5人。報告後、参加者から感想や質問が次々と上がり、意見を交わした。
 青木さんについてのシンポジウム開催を喜ぶ退所者で同園ボランティアガイドも務める平良仁雄さん(77)は、「日本のハンセン病問題は『らい予防法』がものすごい力を持っている」と指摘。「日本のハンセン病を知る時はらい予防法のことも知ってほしい。愛楽園を知ろうと思ったら青木恵哉のことも知ってほしい」と力強く語った。