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『国と沖縄県の財政関係』 沖縄経済の誤解を払拭

『国と沖縄県の財政関係』池宮城秀正編著 清文社・2000円+税

 本書の目的は「沖縄県は多額の財政補填(ほてん)を受けており、米軍基地なしに経済や財政は立ちいかないという誤解を解き、今後のあるべき経済社会の構築に資する」とあり、沖縄経済をめぐる誤解を払拭(ふっしょく)し、未来を展望した好書である。

 国と地方の財政関係、地方交付税、国庫支出金などに関する分かりやすい説明は入門書の役割を果たしつつ、沖縄振興予算、基地関係収入と市町村財政にまで言及し、財政から見た沖縄経済の実相と課題を抽出し、沖縄経済の展望を示している。
 留意すべき点は、自主財源比率などが全国水準以上の県は約10団体で、他はそれ以下であり、首都圏などの大都市の経済力が突出し、他は総じて弱く、標準偏差が大きく、平均値で比較すると実情を見誤るという点である。
 沖縄県の財政力は全国43位で低位にある。しかし、それは経済力の帰結であり、財政構造は、島根県などの低所得県と大同小異であり、ひとり沖縄だけが厳しい状況ではない。
 沖縄県の1人当たり地方交付税は全国で17位であり、類似県(財政力指数0・3以下の10県)と比べるとかなり下回っており、特に多いわけではない。地方債も全国に比して低位にあり、望ましい状況にある。
 国庫支出金は1人当たりで全国3位で高位にある。その要因は、復帰後の沖縄振興特別措置法にある歴史的、地理的、自然的、社会的特殊事情、とりわけ格差是正に起因している。平準化し均衡ある国土にするためである。米軍基地があるがゆえの社会的特殊事情は、復帰前の事由であり、現在まで続く基地偏重の代償ではない。
 本書は基地なくして沖縄経済は成り立たないという俗説を論破している。財政構造も取り立てて脆弱(ぜいじゃく)ではないことを示した。今、沖縄の可能性が高く、景況はここ数年全国を凌駕(りょうが)している。その背景にはアジアの橋頭保(きょうとうほ)、ソフトパワー、さらに人口増加がある。時流が沖縄に味方している。チャンスを逸してはならない。財政は沖縄の可能性を具現化するために執行すべきであり、それが「国民経済の発展に大きく寄与する」と結んでいる。
 (富川盛武・沖縄国際大教授)
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 いけみやぎ・ひでまさ 1948年、沖縄県生まれ。明治大学大学院博士後期課程修了。経済学博士。琉球大教授を経て、現在、明治大教授。日本地方自治研究学会会長、日本財政学会顧問。財政学、地方財政論専攻。

国と沖縄県の財政関係
池宮城 秀正
清文社
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琉球新報