【島人の目】復活祭の子ヤギ料理


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 27日はキリスト教の「復活祭」だった。英語でイースター。イタリア語ではパスクア。キリスト教最大の祭りはクリスマスだが、復活祭は宗教的にはそれよりも重要な儀式だ。イエス・キリストが死後3日で生き返ることを祝う祭りだからだ。それを信じるか否かはさておいて、死からの転生は神だけが可能だから、それを基にキリスト教は今われわれが知るところのキリスト教になった、とも言える。

 復活祭ではクリスマス同様に多くのご馳走(ちそう)が食べられるが、主役は卵と子羊である。子羊は子ヤギにも置き換えられる。新しい命を宿した卵はイエス・キリストの再生の象徴。また子羊はイエス・キリストそのものを表す。
 古代、ユダヤ教などでは神に捧(ささ)げる生贄(いけにえ)として子羊が差し出された。子羊は犠牲と同義語。イエス・キリストは人間の罪を贖(あがな)って磔(はりつけ)にされて死んだ。つまり犠牲になったのである。そこで犠牲になったもの同士の子羊とイエス・キリストが結びつけられた。
 ユダヤ教では生贄にされた子羊は食卓にも上った。その習慣はキリスト教世界にも伝わった。つまり復活祭に子羊を食べるのは、ユダヤ教の影響であると同時に人類のために犠牲になった子羊のキリスト様を食する、という意味がある。
 イエス・キリストを食べる、という感覚は日本人にはなかなか理解できないものだが、これはもちろん生身のキリスト様を食べるという意味ではない。例えば神仏にお供えしたご馳走や酒を人間が後でいただくのと同じことである。仏壇に供された飲食物は神様や仏様が食べておなかの中に入ったのだから、それを人が食べるとはつまり神仏を食べるということである。食べて神仏と一体化してわれわれが浄化される。そういうありがたい食べ物が子羊や子ヤギ料理なのである。
(仲宗根雅則、TVディレクター)