【キラリ大地で】アメリカ 日本語講師、ともこ・マーシャルさん


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 ともこ・マーシャルさん

◆学生に使えるスキルを
 ワシントンDCから南西に車でおよそ2時間半のシャーロッツビルに、第3代大統領トーマス・ジェファソンが創立した名門校、州立バージニア大学がある。建築家でもあったジェファソンによって設計されたロタンダ式の講堂は世界遺産に登録され、観光客が訪れる文教都市。浦添市出身のともこ・マーシャルさん(50)=旧姓砂川=は、この大学で日本語講師として20年間、教壇に立っている。

 高校生の時、1年間米国に留学、東京の大学に在学中は、英国に1年留学し英語力を磨いた。4年生の時にセントルイスのワシントン大学で教授法の講義を受け、卒業後に同大の助手として採用され渡米した。その後、バージニア大学での職を得た。
 ともこさんは、自身の日本語クラスについて「日本のポップカルチャーに引かれて履修するビジネスや文科系の学生に加え、このごろは工学部や生物学部の学生も見られ専攻はさまざま。実際に使える会話力と読み書きのスキルに力を入れている」と説明する。
 さらに最近の学生の傾向を「この25年で学生気質が変化し、人とのつながりが苦手でコミュニケーションに欠け孤独に陥る心理的問題を抱える学生が増えてきた」と述べ、クラスのつながりを密にするため協働作業を実施している。
 「この作業を通して学生がお互いを知ることになり、そこでコミュニケーション能力が培われる実用的な日本語環境をつくるのが目的。生徒の話を聴くことを心掛ける。講義し知識を与えるだけではなく、21世紀のスキルを持つ人材育成も教師としての役目だと思う」と力説する。学生たちは仲がいいとうれしそうに話し「日本語教育に携わる教師たちのネットワークを広げ、日本語教育発展のために貢献できたらと考えている」と抱負を語った。
 学生から学ぶ事の多い教師の仕事は天職だと話すともこさんの趣味は旅行。学生時代に1人で横浜から船に乗りロシアに渡り、ペレストロイカのロシアを体験した。そこからシベリア鉄道で東から西へと旅をした。鉄道旅行で知り合ったチェコ人の家を訪ねたり、見たかったポーランドのアウシュビッツ強制収容所にも足を運んだりした。
 「将来おばあさんになった自分がバックパックを背負ってどこかの国を闊歩(かっぽ)している姿が目に浮かぶ」とほほ笑む。大学生の長男と中学生の娘の母親としても奮闘する日々だ。
(鈴木多美子通信員)