「学校現場にゆとりを」 子ども貧困、那覇でシンポ


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シンポジウム「沖縄の子どもの貧困とケア」で意見を交わす登壇者=27日、那覇市の沖縄大学

 子どもの貧困の実態とケアの現場の在り方を考えるシンポジウム「沖縄の子どもの貧困とケア」(主催・県民間教育研究所、県民間教育研究団体連絡会、沖教祖那覇支部)が27日、那覇市の沖縄大学で開かれた。研究者が性風俗に身を投じる少女の実態を報告したほか、教員などが学力テスト対策や会議、残業などで学校現場に余裕がなくなっている状況を説明した。出席者は、子どもの貧困対策のためにも、教員の多忙さを解消する取り組みが必要との認識を共有した。

 性風俗で働く少女へのインタビューをしている上間陽子琉球大学准教授は、少女たちが考えている生の声を届けた。幼いころから複雑な家庭環境に置かれていることや、自分の子どもを養うために、一度辞めても再び風俗業界に戻って不安定な生活を送っていることなど、少女たちが抱える問題の多様さを指摘した。
 上間氏は、家庭や学校に居場所がなくなった子どもが風俗業界に入るという短絡的な図式で考えず「子どもが何に困っているのか考え、それに即して支援する必要がある」と述べた。
 スクールソーシャルワーカーの崎原美智子氏と小学校教諭の木本邦広氏は、学校の状況や児童、生徒と向き合って改善につなげた実例を報告した。崎原氏は、支援を拒否する家庭を説得して行政につなげた経験や、夜の家庭訪問を通じ、学校に通う意志がある不登校の生徒が登校できるようになった事例を説明した。「学校の先生の協力がなければ成り立たないが、忙しい先生に声を掛けるのをためらうことがある。先生の支援も必要だ」と話した。
 木本氏は、学力テストの対策で小学1年生からテスト漬けになり、子どもも教員もゆとりをなくしている現状を説明。少人数学級の推進や、保護者との関係づくりの必要性を語った。
 会場からは「親がばかだ」「生活保護費の不正受給をなくさないといけない」などの意見が出た。その意見に対し「親が困っていることに目を向けないと解決しない」「不正受給より捕捉率の低さが問題」などの反論もあり、議論を深めた。